野外で遊ぶのは程々に…

 下校中、僕と千夏さんの前を年上の男女2人が歩いている。

手を繋いでいるし、カップルなんだろうな…。


彼氏さんは後ろを振り返って僕達を確認後、ポケットに片手を突っ込む。


その後だ。突然彼女さんが、体を一瞬ビクッとさせた。

…それから歩く足がおぼつかなくなる。


一体何をしたんだ?


彼女さんは彼氏さんに耳打ちをする。


「ダメだ!」

彼氏さんの返事は、後ろにいる僕達にもはっきり聴こえた。


後ろを振り返った彼女さんは、申し訳なさそうな顔をしている。


…いつも通る曲がり角前に着いたので、僕と千夏さんは曲がった。



 「あの2人、をアタシ達に見せつけてたわね」

曲がってしばらくしてから、千夏さんが言う。


「野外プレイなの? あれ?」

以前、車内でを千夏さんにしゃぶってもらったことを思い出す。


カップルの外見に違和感はなかったけど?


「男の人がポケットに手を入れたでしょ? その時にONにしたのよ」


「ON? 何のこと?」

野外プレイって、外でHすることでしょ?


あのカップルは歩いていただけじゃん。


「…その顔、マジで言ってるっぽいわね。振動するおもちゃをに入れてたの!」


千夏さんは自身の股を指差す。


「どうしてそんな事を?」

家まで我慢すれば良いのに。


「スリルを味わうためでしょうね。あの男の人Sっぽかったし、女の人は渋々付き合ったって感じだと思うけど…」


まだまだ僕が知らない世界があるんだな…。

そう思いながら、この話は終わる。



 次の日。千夏さんと登校中、あるものを渡された。

スイッチみたいに見えるけど?


「それ、ONにしてみて」


よくわからないので、ONにしてみる。


「あ♡」

突然色っぽい声を出す千夏さん。


彼女の反応に驚いたので、すぐOFFにする。これって、まさか…。


「…気付いたみたいね。アタシも昨日のカップルの真似してみたの」


「何で!?」

僕は何も言ってないのに。


「玲にをやってもらったら…って考えたら、興奮が収まらなくて…」

千夏さんにしては、恥ずかしそうな様子だ。


「学校に着くまで、こまめにON・OFFにしてちょうだい!」


「わかったよ」

彼女の気持ちに応えるのが、彼氏だよね。


僕はさっきのスイッチをポケットに入れてから、登校し始める。



 千夏さんに言われた通り、僕の気まぐれでON・OFFを繰り返す。

彼女の反応が可愛らしいので、つい夢中になってしまう。


昨日の彼氏さんの気持ち、今ならわかるかも。


校門が見えるところまで来た。そろそろこの遊びも終わりだな。

そう思って、OFFにする。


「玲。そろそろOFFにしてほしいんだけど…」

千夏さんが耳打ちしてくる。


あれ? したはずだけど?

僕はスイッチを取り出して確認する。


…やっぱりOFFになってるよな。千夏さんにも見せる。


「ど…ういう事? これ、壊れちゃった…?」


千夏さんの反応を見ると、ON状態が継続しているようだ。


「や…ばいわ。アタシ…、そうかも」


さっさとおもちゃを取り出せばいいんだけど、周りに登校中の生徒がいる。

そんな状態で、スカートをめくって下着に手を入れるところを見られたらマズイ。


じゃあ、急いで登校して女子トイレに入るとか?

…それはダメだ。千夏さんの様子的に、時間の猶予はあまりない。


「僕が壁になるから、千夏さんは急いでおもちゃを取って」

彼女にだけ聴こえる声で話す。


「わ…わかったわ…」


ちょうど人目につきにくい場所を見つけたので、そこに入り込む僕達。

大丈夫だと思うけど、念のため僕が壁になる。


「…ふぅ、何とか取れたわ」

千夏さんの手に、未だに振動しているおもちゃがある。


「千夏さん、野外プレイはこれっきりにして!」

今回は最悪の事態を避けられたけど、今後はわからない。


ふざけすぎて千春さんに迷惑をかけたくないし。


「そうするわ…」


何とか反省してくれたようだ。


ちなみにおもちゃは振動し続けているので、千夏さんが自分のカバンの奥底に入れた。充電式だし、いずれ勝手に止まるよね。



 登校を続け、教室に入った僕と千夏さん。

お互いの自席に座った時、クラス委員長の田沢さんが声をかけてきた。


「あなた達。さっき人気ひとけのないところに入り込んでたけど、何してたの?」


おもちゃを取り出してました、なんて言えるはずもなく…。


「何でもないって、委員長!」

反論されないように、強めに言う千夏さん。


「……わかったわ」

田沢さんは納得したようには見えないけど、僕達から離れていく。


千夏さんの強気な態度が、功を奏したかも?



 朝から大変な目に遭って疲れたな。スリルはこりごりだ。

そう思う僕であった。

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