年齢制限の謎

 千夏さんの家のリビングでテレビを観ていると、競馬のCMが流れる。

…見た感じ、大きいというか有名なレースをするのかな?


宣伝の仕方が派手な気がする…。


「玲君、競馬に興味あるの?」

千春さんが僕に話しかける。


熱心に見てると思われたのかな?


「いや、そんなつもりはないんですが…」


「競馬は20歳になってからよ♪」


何故かクギを刺されてしまった。本当にそんなつもりないんだよ…。


「母さん、止めはしないのね…」

千夏さんが意外そうに言う。


お金を賭けることだし、止めてもおかしくないよな。


「ちょっとした失敗も、良い経験になるでしょ? 言葉で説明するより、実際に体験したほうが伝わることもあるのよ」


そういう事か…。確かに一理あるね。



 「年齢制限ってさ、おかしいと思わない?」

千夏さんが僕と千春さんを見ながら言う。


「おかしい?」

日常生活で年齢制限されたことないから、思い付きもしなかった…。


「人によって考え方は違うし、成長の仕方やスピードだって違うのに、何で『歳』で一括ひとくくりされる訳? 真面目で成長スピードが早い人が損しない?」


は言い過ぎかもしれないけど、不便かもな…。


「千夏ちゃん。それはね、管理しやすくするためよ」


説明し始める千春さん。


「管理?」


「そう。『A君は優秀だから大丈夫、B君は未熟だからダメ』みたいに個々に対応するのは大変で面倒なの。だから歳で一括管理するのよ」


「そんなの、管理するのをサボりたがる大人の責任じゃん!」


「それを言われると耳が痛いわ…。大人になると、そういう柔軟な対応が難しくなっちゃうのよ。千夏ちゃんには、まだわからないかもね」


千春さんの言う事はわかるけど、千夏さんがここまで年齢制限に異議を唱えるのが気になる。何かきっかけがあるのかな?



 「千夏さん、どうしてそんなに年齢制限が気になるの?」

今の内に訊いておかないとな。


「だってアタシ達の歳じゃ、に手を出せないじゃない!」


僕と千夏さんは高1で16歳だから、あと2年待たないといけない…。


「アタシと玲は分別つくんだから、手を出しても問題ないわよね? 」


以前、移動中の車内で僕のをしゃぶったことを忘れたのかな?

そんな彼女が言っても、説得力に欠ける…。(移動中の車内で遊ぶ にて)


「千夏ちゃん。気持ちはわかるけど、待ってもらうしかないかなぁ…」

苦笑いする千春さん。


「…よく考えたら、待たなくても母さんに買ってきてもらえば解決するわ」


「えぇ!?」

千春さんを巻き込んじゃダメでしょ!


「…頻繁に買いに行くのは恥ずかしいから、程々にしてね♪」


良いんだ!? 千春さん、優しすぎない?


「その代わり、私も千夏ちゃんが選んだの使うから♪」


OKしたのは、これが目的だったりする?


「もちろんよ。…楽しみにしてなさい、玲」

母娘が僕を見始める。


一体、何を買ってくる気なんだ?

よくわからないけど、僕が巻き込まれるのはほぼ確定している…。


…考えても埒が明かないので、その時を待つとしよう。

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