スカートが揺れ動く

 千夏さんと下校中、公園で遊んでいる男の子と女の子を見かけた。

その近くに、2人のお母さん? がいるな。


子供達が可愛いので、公園を通り過ぎるまで観察するか。


…男の子が、女の子のスカートをめくったぞ。

お互い数歳ってとこだろうし、ただのイタズラだな…。


「こら! 何してるの!?」

公園の外まで聞こえる声で怒鳴る、男の子のお母さん。


その後、お母さんは思いっ切り男の子をビンタする。

…めちゃくちゃ痛そうだな。


「ごめんなさーい!!」

大声で泣き叫ぶ男の子。


あれだけ厳しくされたんだ。もうスカートめくりはしないでしょ…。


僕と千夏さんは、公園を通り過ぎる。



 「あれって、自業自得よね…」

公園を通り過ぎた後、千夏さんが僕に話しかける。


彼女も、さっきのやり取りを見ていたようだ。


「うん…。でもちょっと可哀想かな…」

あんなに強くビンタしなくて良いのに。


「甘いわね。なんて大罪なんだから、小さい内からしっかりしつけないとダメよ」


「大罪って…、大袈裟でしょ」

せめてならわかるけど…。


「大袈裟?」

千夏さんの声のトーンが変わった…。


ヤバい、地雷踏んだかも?


「玲。好きでもない人に触られたり、ジロジロ見られる気持ち悪さとかについて考えたことある?」


「ない…です」

千夏さんの雰囲気に圧倒される…。


「でしょうね。セクハラって、男女で大きな隔たりがあるの」


「そう…だと思う」

じゃなかったら、千夏さんがキレることはないよね…。


「この間、下着泥棒が捕まったってニュースあったじゃない?」

(出会ったきっかけをいじられる にて)


「うん…」

千春さん・千夏さん共に、下着泥棒に怒っていたな…。


「あの時、あんただけ意見を言ってなかったわよね? 何で?」


「何でって…。特に言う事がなかったから…だけど」

ていうか、千夏さんよくそんな事覚えてるな…。


「『下着泥棒なんて大したことない』って思ったから何も言わなかったの?」


「それは違うよ! 言葉が見つからなかったというか…」

ここはとしたほうが良いな。


「…まぁいいわ。とにかく覚えておいて。セクハラを甘く見ちゃダメ!」


「わかりました…」

今後そういう話が出たら、千夏さんに寄り添う意見を言った方が良さそうだ。



 いつものように千夏さんの家に寄り、彼女がさっきのスカートめくりの件を千春さんに話す。…こんな事でも話すのは、この母娘ならではだな。


「…私も小さい頃やられたことあるわ」


千春さんは、されたことがあるのか…。


あれ? 結局、千夏さんはめくられたことあるのかな?

それを訊いたら、再び地雷を踏みそうなので訊かないけど…。


「めくってきたのって、好きな子だったの?」


さっきの説教を聴いた限りだと、好きな人なら気にならないようだ。

千夏さんがそこを気にするのは当然か…。


「ううん。全然話したことない子だったわね」


「マジで? そいつが痛い目に遭わないと気が済まないわ!」


千夏さんのセクハラに対する気持ちはわかるけど、子供に厳しすぎるのもどうなんだろう? なかなか難しい問題だよな~。


僕は母娘を眺めながら思うのであった…。

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