アルバムの行方
千夏さんの部屋の片付けを手伝っている僕。手伝うと言っても、彼女が服や下着を僕に見せてきて、似合うかどうかの意見を言うだけだ。
好ましくない意見を言われた服や下着は捨てられていく…。
そんな調子で部屋の物を引っ張り出している時、千夏さんは卒業アルバムを見つけた。僕と彼女は小学・中学は別なので、見た事がないデザインだ…。
「これ、中学の奴だわ…」
そう言ったものの、千夏さんは中身を見ようとしない。
こういう時って、久しぶりに見るのが王道だと思ったけど…。
「玲はさ、卒業アルバムってどうしてる?」
「わからない…。捨ててはいないから、どっかにあると思うけど」
どこにあるんだろう? 小学・中学の卒業アルバム…。
「卒業アルバムってそんなものよね。中学に今でも会いたい人はいないから、見る機会はないし…。かといって、捨てるのは申し訳ないというか…」
「作りが凝っているから捨てにくいよね。わかるよ」
その直後、部屋の扉がノックされ開かれる。…千春さんだ。
「2人とも、お昼できたけど来れそう?」
「大丈夫よ、今行く」
千夏さんが返事した後、僕達はリビングに向かう…。
「母さんは、卒業アルバムどうしてる?」
昼食中に、さっき悩んだことを千春さんに訊くようだ。
「捨てたわよ」
そんなあっさり言うなんて予想外だな。
「どうして捨てたんですか?」
何か理由があるのかな?
「読み返す時間はないし、振り返りたい思い出もないしね。私がつまらない学生時代を過ごしただけかもしれないけど…」
苦笑いする千春さん。
「母さんが捨てたなら、アタシも捨てよ」
千夏さんは決心したようだ。
「玲君はどうしてるの? 卒業アルバム」
「押し入れのどこかにあると思います…」
未だに思い出せないよ。
「もし見つけたら、私に見せてね♪ 昔の玲君に興味あるから」
「アタシも見たい!」
話に乗ってきた千夏さん。
「だったら千夏さんのも見せて。それなら良いよ」
僕だけ見せるのは不公平だよね。
「…仕方ないわね。玲のを見るまで、捨てるのは保留よ」
さっきの決心は、早くも崩れたようだ…。
後日。押入れを漁った結果、何とか卒業アルバムを見つけることができた。
けどホコリまみれだし、なんか変色してる部分がある…。
こんなのを2人には見せたくないので、やっぱり捨ててたと報告しよう。
……僕の報告を聞いた2人は残念がっていた。
あの2人に会えた今が、一番充実している。振り返る必要はないな。
僕は卒業アルバムをゴミ箱に入れた…。
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