簡単な浮気調査!?

 千夏さんの家のリビングで、3人がのんびりしている時だ。

突然彼女が僕を観て言った。


「玲。携帯貸して!」


千夏さん、今手に携帯持ってるけど…? なんかトラブルとか?


「いいよ」

僕は暗証番号を入力後、携帯を彼女に渡す。


「…すぐ渡してきたわね。玲は潔白だわ!」


よくわからないけど、試されている感じは伝わった。

携帯はすぐ僕に返される…。


「千夏さん、何を知りたかったの?」


「携帯をすぐ渡すって事は、隠したいことがないって事よ。だから玲は浮気してないことが分かったの」


「浮気!? 僕がそんな事する訳ないでしょ!」

学校にいる時は千夏さんとほぼずっと一緒にいるし、放課後だってこの家にいる。


いつ浮気する時間があるっていうんだ?


「わからないわよ~。大人しい子だって、可能性はあるんだから」

意味深な発言をする千春さん。


「千夏さんは、携帯貸してくれるよね?」

試されたんだから、今度は僕の番だ。


「…え? 今はちょっと…」

彼女は何故か嫌がっている。


「何で嫌がるの? もしかして…」


「…そこまで言うならわかったわよ。…はい!」

手に持っている携帯を僕に渡してきた。


…持ってみて分かった。千夏さんの携帯、ちょっと手汗を感じるな…。

僕より長時間持っていたから?


「せめて拭いてから渡したかったんだけど、玲が疑いの眼差しを向けるから…」


何で僕が悪いみたいな流れになってるの?


「玲君。嫌がったからって、すぐに浮気だと決めつけるのは良くないわよ」

千春さんに注意されてしまった…。


「だって…」

今までしてきた話って、そういう事でしょ?


「千夏ちゃんの話を聴いてから考えても遅くはなかったはずよ。結論を急がず、器の大きい人になってほしいわね♪」


言われてみると、そんな気がする。ちゃんと千夏さんに謝らないと。


「ゴメン千夏さん。さっきは急かしちゃって」


「良いのよ。元はといえば、試したアタシが悪いんだし…」


僕達の様子を、千春さんは微笑みながら観ている。無事謝れたし、一件落着かな。



 「母さん。さっきの『大人しい子だって、可能性はある』ってどういう事?」


千夏さんもそこに疑問を抱いたみたいだ…。


「若い頃、大人しそうな子と付き合ったことがあるんだけど、そんな子でも浮気はするのよ。人は見た目によらないってことね」


なるほど、実体験なのか…。


「でも玲君に言う必要なかったわ…。ゴメンね、不快にさせちゃって」

謝る千春さん…。


「全然気にしてないから大丈夫です!」


千春さんと付き合っておきながら浮気をするなんて…。

欲張りというか、ワガママな人なんだろうな。



 「人を疑うと、関係が悪くなるわ…」

千夏さんがさっきまでのやり取りを振り返る。


「そうね…。できれば疑わずに過ごしたいけど、難しいわよね…」


他の人はわからないけど、この母娘のことは疑わずに過ごしたいな…。

そう思う僕であった。

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