髪を染めたい彼女

 千夏さんと一緒に登校中、自転車に乗った明るい茶髪の男子学生とすれ違った。

僕達が通う、保坂高校の生徒ではないな。制服が違うし。


人によって髪に暗い茶色が混ざる場合があるらしいけど、彼はそんな感じではない。

明らかに染めてるな。髪染めOKの高校みたいだ…。



 「玲ってさ、髪染めたいって思ったことある?」

千夏さんが突然訊いてきた。


さっきの彼の髪を見て思ったのかな?


「まったくないね」


母さんが家で白髪染めしてるのを観たことあるけど、そのせいで『染める=面倒』というイメージが定着している。


その影響で、やりたいとは全く思わない…。


「そっか…。アタシは大学デビューの時に染めても良い気がするのよ」


「そうなんだ…」


いくら彼氏といえど、髪を染めるか否かに口を挟む必要はないね。

やるかどうかは、千夏さんが決めることだ。


「髪を染めるって大変だから、母さんの意見を訊いたほうが良いかな?」


もし失敗したら、面倒なことになるのは容易に想像できる。

千春さんのアドバイスを聴いておきたいよね。


「そうしたほうが良いよ。気が早いかもしれないけど、今日訊こうか」


「うん。よね」



 放課後。僕と千夏さんは、髪染めについて千春さんに訊いてみた。


「髪染めねぇ…。正直、オススメしないわ」

表情が曇っているな。


「何で?」

理由を尋ねる千夏さん。


「お金がかかることと、染めるのが大変だからよ。美容院で染めたとしても、美容師さんの腕に左右されるからね。満足できるとは限らないの」


そういう事か…。


「それに2人は、将来バイトや就活をすることになるけど、髪を染めている子って印象が悪いのよ。染めてる色によっては、不良に見られるかもね」


髪色を変えるとイメチェンできるけど、良い意味にも悪い意味にもなるな…。


「言い過ぎかもしれないけど『百害あって一利なし』だと思うわ。なら話は変わるけど、千夏ちゃんにはまだ関係ないわね」


千春さんがここまで言うなんて予想外だな…。

このアドバイスを聴いて、千夏さんはどう思ったんだろう?


「…わかったわ。染めるの止める!」

千春さんのアドバイスを、真正面から受け止めたようだ。


僕は何も言う気はないので、この決定を尊重しよう。



 「髪を染めるのにお金を使うなら、勝負下着を買った方が良いわよ。ね?」

僕に同意を求める千春さん。


「ね?」って言われても…。


「…確かにそうかも!」

千夏さんは納得した様子を見せる。


「髪色はコロコロ変えられないけど、勝負下着は変えられるでしょ? 玲君を満足させられるのはどっちなのかは、一目瞭然だと思うけど?」


未だにピンと来てない僕のために、千春さんが解説してくれた。


「確かにそうですね。勝負下着のほうが見てて楽しいです!」

レパートリーが多いからな。見てて飽きない。


「そこまで言うなら、今のアタシ達の下着見せても良いわよ」

千夏さんは千春さんとアイコンタクトをとった後、服を脱ぎ出した…。

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