ニキビに困る彼女

 学校に行く際、僕と千夏さんはマンション前で合流してから一緒に登校している。


いつものようにマンション前に着くと、千夏さんは前髪を気にしてやってきた。

…何かを隠しているようにも見える。


「おはよう、玲」


「おはよう千夏さん」

訊いて良いのか悩むな…。


「実はさ~、おでこにニキビができちゃったのよ」

僕の視線に気付いたのか、千夏さんは自分から見せてきた。


大きくないけど、ポツンと1つだけあるニキビか…。

そりゃ隠したくなるよね…。


「ここんとこ、遅くまで漫画を読んでるからさ~」

苦笑いする千夏さん。


原因がわかってるなら、ちゃんと寝れば良いのに。

言ったら余計なお世話だろうし、黙っておこう。


「…続きは、歩きながらにしましょ」


僕達は学校に向けて歩き出す…。



 「玲はニキビで悩んだことある?」

千夏さんが訊いてきた。


「ないね。そもそも、あまりできたことがないんだよ…」

そういえば、中学生の頃ニキビがひどいクラスメートがいたっけ。


当時、真面目な生活はしてないはずなのに…。

何が影響してるんだろう? よくわからないな~。


「羨ましいわ…」


もしかして千夏さん、今までもニキビで苦労したことあるのかな?


「ニキビなら、薬でも塗れば良いんじゃない?」

大抵は勝手に治るけど、スピード重視なら薬を使ったほうが良いはずだ。


「塗りたかったけど、家になかったわ。だから出かける前に『薬買ってきて』って母さんにお願いしたけど」


「それなら安心だね」



 学校に着いてからも、前髪を気にする千夏さん。

気にし過ぎているせいで、逆に目立っているような…。


ニキビぐらい誰でもなるんだし、そんなに意識しなくても…。



 放課後、いつも通り千夏さんの家に寄る僕。

…リビングの机の上に、ニキビの薬が置いてある。


約束通り、千春さんが買ってきてくれたようだ。


「ふぅ。これで何とかなるわ…」

千夏さんはニキビの薬が入った箱を持った。


…僕達に気付いた千春さんが、キッチンからリビングに移動する。


「千夏ちゃん。この数日、夜更かししてたでしょ? だからできたのよ」


千春さん…。珍しくお説教しようとしてる?


「何でバレてるの? 静かにしてたでしょ?」


「千夏ちゃんの部屋から光が漏れてたからね。気付くに決まってるじゃない」


「……」

千夏さんは黙っている。


夜更かしもニキビができる原因だよな…。これからは早く寝て欲しいよ。



 「千夏ちゃん。早く寝ないと、胸大きくならないわよ」


千春さん、そこに踏み込んじゃうの?


「それは関係ないでしょ?」

半信半疑に見える千夏さん。


「あるわよ。『成長ホルモン』って聞いたことあるわよね? その成長ホルモンが胸の大きさにも関わるの」


「千春さんは学生の時、しっかり寝てたんですか?」

気になるので訊いてみた。


「もちろん。前も言ったけど若い頃は真面目だったからね。規則的な生活してたわ」


千春さんの爆乳は、しっかり寝た証なのか…。なんて説得力だ!


「…わかったわ。これからは、早く寝る」

千夏さんは決心したようだ。


「わかってくれて良かった♪」


これで一件落着だな…。



 「…玲君は、ちゃんと早く寝てるわよね?」

何故か僕のことを訊いている千春さん。


「してると思います」

早寝って、何時ぐらいのことなんだろう?


「玲君は、千夏ちゃんと私の相手をしてもらうんですもの。しっかり寝て、英気を養わないとね♪」


そう言って、僕の肩をつかむ千春さん。ベッドに行きたいようだ…。


「それじゃ、アタシも…」

千夏さんもやる気を出す。


「千夏ちゃん。ニキビができてる時は、体力を温存したほうが良いわよ。疲れちゃうと、治りが遅くなるからね…」


「そっか…。今日は控えめにするわ」


本当かな? そう疑問に思いつつ、僕達は千春さんのベッドに向かう。

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