グループディスカッションのテーマが決まる!

 冬城先生がグループディスカッションのテーマを募集したので、クラスメート全員が考えたテーマをプリントに書いて提出した。


集め終わった後、内容を確認する先生。


…見るスピード早いな。


先生があるプリントで手を止める。その後、すぐに口を開いた…。


「佐下君。これ、あなた1人で考えた?」


「そうですけど…?」


佐下君、何を書いたんだ?


「…今回は君のテーマを採用するわ」

微笑む先生。


採用されたって事は、ちゃんとした内容なんだよな…?


「テーマは『』よ。みんなも考えておいて…」


佐下君がこの内容を考えた?

先生の言う通り、違和感があるな…。



 冬城先生に叱責され、『教室の掃除1週間』の罰を終えた佐下君は、前みたいにふざけたことを言わなくなった。


けど考えを変えたかは別だ。

もしかして彼は、未だに千春さんのことを…?


…考え過ぎか。


隣の席の千夏さんを観る。…微妙な表情をしているように見えるな。


千夏さんは佐下君を嫌っているし、訊く必要ないよね。



 放課後。千春さんにグループディスカッションのテーマを伝える。


「歳の差恋愛…。ずいぶん大人のテーマね」

千春さんは驚いている。


犬派・猫派と『体をどこから洗う?』 に比べたらそうなるね…。


「アイツがこんなテーマを考えるなんて変よ!」

千夏さんも違和感を抱いているな…。


「僕もそう思うけど…。漫画とか映画の影響かも?」

そういうシーンがあったから書いてみた、とか?


「アイツ単純そうだし、あり得そうね…」


千春さんのことが気になるから書いた、とも解釈できるけど…。



 「それで、玲君と千夏ちゃんはどう思うの? 歳の差恋愛について」

千春さんが訊いてきた。


「そんなの、恋愛する2人の自由でしょ。何が問題なの?」


「僕もそう思います」

千夏さんの言った事は正しいはず。


「甘いわね。それじゃ議論にならないと思うけど…」


昨日までグループディスカッションを知らなかった千春さんに言われると悔しい。


「家族や友人に祝福されない恋愛は、寂しいものよ。それに周りの目もあるしね」


「どうして周りの目を気にする必要がある訳?」

千夏さんが反論する。


「人は、1人では生きていけないからよ。社会の一員として過ごすには、周りに合わせたり理解してもらう事が必要なの」


「……」

千夏さんは黙っているけど、納得しているようには見えない。


「自分勝手な人だらけになると、社会は成り立たない。だからルールがあるのよ。

校則を守ることは、社会の一員になるための予行練習みたいなもの♪」


校則をそんな風に考えたことないなぁ…。

僕と千夏さんはまだ高1だから、社会の荒波に揉まれてないし…。


「周りに合わせることばかり考えたら、やりたいことがやれないわよ…」

うんざりした顔をする千夏さん。


「千夏ちゃんの言いたいことはわかるけどね。度が過ぎると調になるから、自由とルールを守ることのバランスは難しいのよ…」


千春さんは大人だから、僕達より周りの目に敏感なんだな…。


こういう考えだから、下ネタを言う鈴華さんと距離を置いたのかも?



 「つまり千春さんは、歳の差恋愛に反対なんですか?」

理由を聴いていると、そういう意味にしか聞こえない。


「周りのことを考えて行動できるなら反対しないわ」


「わかったような、わからないような…」

千夏さんがつぶやく。


僕も千春さんの説明全てに納得できたわけじゃない。


「議論なんだから、正しいか間違っているかは置いといて意見を言わないとダメよ。

偉そうに言っちゃったけど、1つの意見に過ぎないんだから…」


そうだよな。いろんな人がいるからこそ、様々な意見が出るよね。

たくさんの意見を聴くことで、ゴールが見えてくるはず。


「千春さん。アドバイスありがとうございました」


「玲君の参考になって良かったわ。当日頑張ってね!」


「はい!」



 そして、グループディスカッション当日を迎える…。


※次回から数回、グループディスカッション編になります。

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