体育祭② 体育祭開始! それから…

 体育祭当日。今日は体操服で登校してもOKなので、学校から近い僕と千夏さんは体操服で登校する。


千春さんは買い物を済ませてから、学校に来るらしい。

応援団が関わるのは最後のリレーだけだから、最初からいる必要はないよね。


「体育祭って長い時間外にいるから、日焼け止めをすぐ使い切っちゃう…」

千夏さんが不満を漏らす。


「午前中で終わるから、そんなに使わないでしょ?」


体育祭の概要説明があったけど、熱中症対策のため午前中で全て終わるようだ。

その後お昼を食べて、放課後になる。


中学校の時は、一日中やってたなぁ…。


「玲。午前中だろうが、日差しはお肌の大敵なのよ。ちゃんと塗らないとダメなの」


「そうなんだ…」


「この前、母さんからお肌の手入れのこと、色々教えてもらったでしょ?」

(千春さんの若々しい秘訣? にて)


「まぁね…」

あの時は湿とかの話はしたけど、は触れてなかったよ…。



 朝のSHRショートホームルームが始まってすぐ、担任がクラスを見渡して言う。


「今日の体育祭、怪我をせずに頑張ってくれ! 先生は影から見守っているぞ」


「千春さんの応援があれば、向かうところ敵なしっス!!」

佐下さした君は気合十分のようだ。


応援があるのは最後のリレーだけなの、わかってるのかな?

言うまでもなく、リレー以外の種目はあるけど…。


「千春さん?」

担任は誰のことかわかっていないようだ。


「古賀さんのお母さんのことですよ。先生」

田沢さんが補足する。


「…おお、そうか。古賀さんのお母さんは、チアの経験があるのかな?」

先生からしたら、佐下君のテンションの高さは意味不明だろう…。


「いえ…」

千夏さんは簡潔に答える。…答えるのが面倒なんだと思う。


☆―――


※ 学校の設定・体育祭の内容など、現実と大きくかけ離れていますが

フィクションなので、大目に見て下さい。


わかりにくい部分があったら、申し訳ないです…。


―――☆



 SHRが終わった後、自分の椅子を運動場の該当場所に運ぶ。


保坂高校は1年から3年まで各3クラスあり、僕と千夏さんは1ーCになる。

クラスの人数は、どこも30人で同じだ。


つまり全校生徒は30×9=270人になる。


高校にしては小規模で少人数だけど、それをウリにしている学校なのだ。



体育祭の種目も個性的だ。大縄跳びや騎馬戦のようなメジャーなものに加え

球技大会で有名なバレーボールも種目に含まれている。


バレーボールは体育館で行うけど、運動場でやる種目と同時進行になる。

どっちを観戦するかは、生徒次第なのだ。


運動場の種目のほうが目立つと思ったので、僕はバレーボールを選んだ。

体育は苦手だから、目立ちたくないんだよ…。


そんな僕が種目に参加した理由は、最低1回の参加が義務付けられているから。

午前中で終わるから種目数が少なく、誰がどの種目に出るかは結構揉めたな…。


千夏さんは大縄跳びに出ると聴いている。その時は、温かく見守ろう。


対戦相手の決め方は、ランダムで決まったトーナメントだ。

大縄跳びのように、全クラス同時に行って合計数を競うものもある。


開会式をやるため、運動場に並ぶ僕達。

…校長の話と、選手宣誓を聴いた。どこも同じようなことをするね。


さぁ、体育祭の始まりだ!



 バレーボールに参加した僕のチームは、2回戦で負けた。

もう種目に参加しないので、観戦に徹するとしよう。


…外の様子が気になるので、運動場にある自分の席に戻ってきた。


どうやら、大縄跳びをしている最中のようだ。

僕のクラスの結果はどうなんだろう? 途中から見ると、よくわからない…。


笛が鳴ったから、制限時間かな。

集計結果を集める人がいる。…結果はどうだ?


アナウンスによると、1-Cは全9クラスで2番目に飛んだ回数が多いらしい。

凄いな~。早々に負けたバレーボールチームが情けない…。


喜んでいる、大縄跳びに参加した僕のクラスメート。

その中に千夏さんがいる。彼女も笑顔で、周りの女子と喜びを分かち合っている。


大縄跳びが終わったので、参加者は自分の席に戻る。

…千夏さんは座っている僕に気付き、僕のところまで来てくれた。


「玲。アタシ達のクラス、2位だったわ!」


「途中から見てたから知ってるよ」


「そっか…。アタシ達、頑張ったでしょ!」


「うん、凄いと思う。僕達バレーボールチームは、2回戦で負けちゃってさ…」


僕が知る限り、勝つことにこだわるクラスメートはいない。

だけど、どうせなら勝ちたいよね…。


「ドンマイ!」

千夏さんは僕を励ます。


彼女は大縄跳び以降、種目に参加しない。僕と同様、観戦に回ることになる。



 「玲君~!、千夏ちゃん~!」


聞き覚えがある声が、僕達を呼ぶ。


「千春さん」


「母さん」


僕達は千春さんに駆け寄る。


「学校に来て、早めに2人に会えて良かったわ♪」


「あれ? 保護者の集合時間って、もうちょっと後ですよね?」

集合時間は聞いてるけど、まだ先のはずだ…。


「応援団が気になって、いてもたってもいられなくなっちゃった♪」


千春さん、本当に楽しみなんだな…。


「玲。応援団に参加する保護者って、職員室に集まるのよね?」

千夏さんが確認する。


「そうだよ」


そこで学ランの上を借りた後、体育の先生から軽く説明を受けるらしい。


「とりあえず、職員室に向かいましょ。誰かいるかもよ?」


千夏さんの言う通りだな。


「わかった。そうしようか」

僕達は、千春さんと共に職員室に向かう。



 職員室前の廊下に女性が1人いて、スマホをいじっている。

どう見ても先生じゃないぞ。という事は、応援団に参加する保護者か?


その保護者は千春さんに比べたら歳を感じるけど、それでも若く見えるな。

服装や雰囲気から、何となくわかる…。


この人も早く来たから、ここで待ってるのかな?


僕達に気付いた女性は、千春さんを見つめる…。

その後、とんでもないことを言い出した。


「…春ちゃん、全然変わってないね! あたし、鈴華だよ! わかる?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る