千春さんの画像が欲しい!?

 千春さんが参加した授業参観が終わった後、佐下さした君・遠藤君・高柳君の3人が、千春さんに興味を持った。


それだけなら問題ないんだけど、体育が終わり教室で着替え終わった後に、佐下君からとんでもないことを言われてしまう…。


「今村君、古賀さんの母ちゃんの画像が欲しいんだけど…」


彼は千春さんのことが気になるあまり、いつでも眺められる画像が欲しいようだ。


「佐下、お前年上好きなのかよ?」

からかうように言う遠藤君。


「ちげーって。あの人が特別なんだ。授業参観でしか会えないなんて、寂しいだろ」


「だからって、画像を求めるのはヤバくね?」

高柳君が少し引いている。


「今村君、頼むよ~!」

佐下君、僕にしがみつくのは止めて欲しい。


この件、僕が応じる義理はない。彼とは全然仲良くないんだから。


「…変態行動はそこまでにしておけ。邪魔して悪かったね、今村君」

女子が教室に入ってきたので、高柳君が僕から佐下君を引き離す。


「…気にしなくて良いよ」


「今村君、俺待ってるからな!」

佐下君はそう言うと、遠藤君・高柳君と共に僕から離れていく。


彼の気持ちは少し理解できる。千春さんが魅力的なのは、間違いないからだ。

そうでなかったら、をしゃぶってもらう事をお願いしなかっただろう。


とりあえず、話だけでもしてみるか?

断られても僕はノーダメだから、気にならないし。



 放課後、千夏さんの家に寄る僕。千春さんはリビングでテレビを観ていた。


「おかえり、千夏ちゃん・玲君」


「ただいま」


「お邪魔します」


「2人の席って、隣同士だったのね。探しやすくて楽だったわ♪」


「千春さん、授業参観どうでした?」

僕は思い切って、訊いてみることにした。


「やっぱり、昔とは勉強することが違うわね。観てて面白かったわよ。

…玲君は、もうちょっと真面目に授業を受けたほうが良いかな」


眠そうにしていたのがバレていたか…。


「同世代と仲良くできる学生時代は貴重だから、大切にしてね♪」


僕にはピンとこないけど、千春さんの言う事だ。意識しておこう。



 一応、佐下君の件話してみようかな?


「千春さん、実は僕のクラスメートからあるお願いをされまして」


「? 何かしら?」


「千春さんの画像が欲しいみたいなんですよ」


「はぁ!!?」

千夏さんが大声を上げる。


驚くのも無理ないよね。


「玲。誰からそんな話されたのよ?」


「佐下君だよ」


「あいつか。前からスケベだと思ってたけど、そこまでとはね…」


「玲君。佐下君が私の画像を欲しがる理由って何なの?」


「玲、正直に言いなさい!!」


元々隠す気ないし…。


「若くて美人で、オッパイが大きい千春さんが気になるそうです」


「若くて美人ね…♪」

千春さんはニヤニヤしている。満更ではないようだ。


「母さんを嫌らしい目で見るなんて…!!」

対照的に、ブチ切れ寸前の千夏さん。


「…わかったわ。他の人に渡したり、ネットにあげなければ、撮ってもいいわよ」


「母さん、佐下のお願いなんて無視すれば良いじゃない!!」

千夏さんは当然納得しない。


「私のようなおばさんを褒めたご褒美よ♪」

器の大きさを見せる千春さん。


さすが大人。


「玲。佐下に画像を渡す時は、アタシがそばにいる時にして!!」


「わかったよ…」

千夏さんの目が本当に怖い。


僕は自分のスマホで、千春さんを撮ることにした。

よく考えると、どういう画像が欲しいか聞いてないな。


…ここは無難に、椅子に座って足を組んでいる様子にしよう。

僕は千春さんにそうお願いし、1枚撮る。


我ながら、よく撮れてる。これなら彼も満足してくれると思う。



 翌日。千夏さんと登校すると、佐下君は教室にいた。

渡すタイミングは今だな。そう思った時…。


「佐下!!」

千夏さんが彼を呼んだ。


「…なんだよ?」


「あんた、母さんの画像が欲しいとか何考えてる訳?」


佐下君が僕を観る。千夏さんにバレるとは、思ってなかったようだ。


「今村君、古賀さんに話したのか?」


「画像のことを説明した時に、千夏さんもそばにいたからさ…」


「それで、撮ってくれたのか?」

期待の眼差しを僕に向ける佐下君。


「まぁね…」


「よっしゃーーー!!!」

佐下君はガッツポーズをした。喜んでくれるのは良いけど、声が大きい…。


「あなた達うるさいわよ!」

クラス委員長の田沢さんが注意した後、僕達のそばに来る。


「今村君。古賀さんのお母さんを撮った画像を、佐下君に渡そうとしてるのよね?」

田沢さんが状況確認をする。


僕達のやり取りは周りに丸聞こえのはずだけど、念のため再確認したのかな?


「そうだよ」


「その画像、私に見せてちょうだい」


「いいよ。…ほら」

僕は撮った千春さんの画像を、田沢さんに見せる。


「この人が古賀さんのお母さん…。若々しくてスタイルが良い人がいたから、私も気になっていたわ。佐下君のような男子なら、画像を欲しがるかもね」


「今村君、早く画像を…」

佐下君は我慢できない様子だ。


「エッチな画像じゃなかったし、私は何も言わないわ」

田沢さんは見守るようだ。


「佐下君。その事なんだけど『他の人に渡さない・ネットにあげない』が条件なんだ。当然、守ってくれるよね?」


千春さんが言った事だ。絶対守ってもらわないと…。


「もちろん。俺が楽しむ目的以外には使わないぜ」


「楽しむって、あんた…」

千夏さんが引いている。



 佐下君が約束を守るなら、渡すとしよう。僕は彼の携帯に転送した。


「…よく撮れてるなぁ。今村君、本当にありがとう!」


佐下君はとても嬉しそうだけど、千夏さんは複雑だろうね…。


「…忘れるところだった。古賀さんの母ちゃんの名前、教えてくれ」


「千春さんだよ」


「千春さんか…。良い名前だな~」

彼は画像を観ながらニヤニヤしている。


「……」

千夏さんは佐下君を睨んでいる。


「千春さ~ん!また会いたいよ~!!」

佐下君は、教室の中心で愛? を叫んだ。


「佐下君。 うるさい!」


田沢さんが注意して間もなく、チャイムが鳴った。

朝のSHRショートホームルームが始まるからだ。全員席に着いてすぐ、担任が教室に入ってきた。


「先生。授業参観って、もうないんですか?」

担任が入って早々に質問する佐下君。


「? 急にどうした? 佐下?」

担任は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。


「母さんをこれから授業参観に呼ぶのは、止めた方が良さそうね…」

隣の席にいる僕に聞こえる程度の小さな声で言う千夏さん。


「あはは…」


あんなやり取りをしたせいで、クラスのほぼ全員が千春さんの存在を知ったことになる。佐下君のような男子が増えるかもしれないよな…。



 放課後になった。画像を渡した事、千春さんに報告しよう。

いつものように向かうと、彼女は玄関付近の拭き掃除をしていた。


「おかえり、玲君・千夏ちゃん」


「お邪魔します」


「ただいま」


僕達が帰ってきたので、リビングに向かう3人。


「画像の話はどうなったの? 玲君?」

千春さんから訊いてくるとは…。


「佐下君、とても喜んでましたよ」


「そう…。それは良かったわ♪」


「……」


佐下君が話題に上がると、千夏さんはわかりやすく不機嫌になる…。

自分の母親がエロい目で見られてるんだ。気持ちはわかるけど。


「母さん、もう授業参観に来ないで!」


「えぇ!? 何で? 私、何かやった?」

千春さんが素っ頓狂な声をあげる。


彼女の存在が良くも悪くもクラスをかき回していることを、当の本人は知らない…。

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