あれを着ける? そして……
ベランダに干してある千春さんの黒いブラの横に、千夏さんの白いブラが干してある。膨張色の白の力をもってしても、千春さんの大きさにはまったく叶わない…。
(今すぐ、白いブラを着けるんだ! にて)
「玲。アタシと母さんの下着を見つめてどうかした?」
千夏さんが訊いてくる。
ちょっと見てただけのつもりなのに、千夏さんに気付かれていたか…。
近くにいる千春さんには、気付かれてないと良いな。
「もしかして玲君、ブラを着けてみたいの?」
千春さん、急に何を言い出すんだ?
「そんな訳ないでしょ!」
「強く否定するって、怪しいわよね?」
千夏さんがニヤニヤしている。
「ね~♪」
千春さんもニヤニヤし始める。
「大体、ブラは男の僕には着けられない物ですよ。そんな物に興味なんて…」
ブラの存在にエロさは感じるけど、着けるものじゃない。
「あら、それなら問題ないわよ」
千春さんがあっさり否定する。
「え?」
「玲君には胸がないけど、何かを詰めればブラを着けられるわ」
よくわからないけど、話がトントン拍子に進んでいる。
このままだと、おもちゃにされそうだ。
「千夏ちゃん、ブラ持ってきて。玲君に着けてあげましょ」
「良いわね。…玲にはどのブラが似合うかな~?」
そう言って、リビングを出る千夏さん。何故かとても楽しそうだ。
「私は、玲君の胸になりそうなものを探してくるわね」
謎の発言をした千春さんも、リビングを出る。
僕、着けるなんて一言も言ってないけど?
それから十数分後、2人が戻ってきた。
「玲が着けるブラはこれね」
フリルが付いたピンクのブラだ。よりによってピンク?
「タオルを胸にするけど良いかしら?」
千春さんは、サイズが異なる数枚のタオルを持ってきた。
なるほど。タオルをブラのカップに詰めるのか。
それよりも…。
「千春さん、何でスカートを持ってるんですか?」
ベージュのミニスカートは、今はいらないはずだ。
「せっかくブラを着けるんだから、スカートも穿きましょうよ♪」
「いやいや、全然繋がりないですよね?」
「もしかしたら、男子でもスカートを穿くことがあるかもよ?」
千夏さんも会話に加わってきた。
2人を説得するのは難しい。なら受け入れた方が早いか…。
「…仕方ないですね。今回だけですよ」
「ありがとう玲君♪」
微笑む千春さん。
「んじゃ、パンツ一丁になってちょうだい」
僕は千夏さんに言われた通り、上下を脱ぐ。
「ブラはアタシが着けるから、スカートは母さんお願い」
「わかったわ」
それぞれの持ち主が、僕に着させるのか。
「まずはアタシからね」
千夏さんはそう言って、ブラ紐を僕の腕に通す。
その後、タオルをブラのカップに詰めてから、僕の胸に合わせて着けた。
タオルは落ちてこないから、ちゃんと着いている…はず。
「どう?」
千夏さんが感想を訊いてくる。
ブラのカップが包んでいるのはタオルなので、胸が包まれている感覚はない。
けど…、ブラ紐が気になるな。
「ブラ紐が窮屈だね」
男は上半身に何かを着けたりしない。違和感が半端ないな。
「でしょ? 女の子は、四六時中その感覚なのよ」
千春さんが補足する。
それに加えて、千春さんは爆乳の重さもある。…女性って凄いな。
「夏になると、ブラ紐あたりが蒸れたりかゆくなるの…」
千春さんに言われなくても、僕だってパンツのゴムの締め付けでかゆくなることがある。女性はブラもプラスされるのか。本当に大変だ。
「夏かゆくなるのは、股間だけじゃないってこと」
千夏さんは、あのCMに文句を言いたいのかな?
「でしたら2人とも、ノーブラで過ごすのはどうです?」
ブラ紐の辛さが分かったんだ。なるべく着けないほうが良いんじゃないか?
「えぇ!?」
2人が僕を観る。
「玲、アタシ達に露出プレイさせる気なの?」
「玲君。いくらなんでもそれは…」
千春さんすら戸惑った様子を見せる。
「すみません。家の中では、が抜けてました」
これを言い忘れるとは…。完全なセクハラ発言だったよ…。
「まったく…、驚かせないでよ」
「でも玲君の言いたいことはわかるわ。外しちゃおうかしら♪」
「母さん、もし宅配便の人が来たらどうする訳?」
「その時は、エプロンを着ければ問題ないわよ」
…千春さんは、本当にブラを外した。
「ふぅ。ブラのサイズが合わなくなってきたから、ない方が楽だわ~」
「嘘でしょ!?」
千夏さんが驚愕する。
まさか、今もなお大きくなっているのか? 脳は死ぬまで成長し続けると聞いたことがある。胸もそうなのかな?
僕と遊ぶ時、千春さんは胸を使ったプレイが多い。その刺激が、活性化のキーになっているとか? ……ダメだ、よくわからない。
「だったら、アタシも外す」
千夏さんも外してしまった。2人のTシャツの向こうに、ありのままの胸が…。
意識しすぎないように注意しよう。
その後、千春さんがスカートのことを思い出し、僕は穿くことになる。
スカートのホックを止めるだけで、簡単に穿くことができた。
千春さんのハーフパンツを穿いたことあるし、スカートもイケるよな。
(お背中流しま~す♪ にて)
スカートを穿き終わった後、脱いだTシャツを再び着る。
これで千春さんが望んだ格好になったけど…。
「玲君、可愛いわよ♪」
千春さんは褒めてくれるけど、喜んでいいのか?
「……玲の胸が、アタシより大きい」
落胆する千夏さん。
かける言葉が見つからない…。悪いけど、放っておこう。
「玲君。ブラは嫌だったかも知れないけど、スカートはどうかしら?」
「風通しが良くて良いですね。夏に家で穿くなら、アリかもしれません」
誰かに見られたくないから、家限定だ。
「良かった♪ 私とサイズが合うみたいだし、これからも着てね♪♪」
「はぁ…」
マズイな。今回のような着せ替えショーが増えてしまうかも?
それからというもの、2人は家で過ごす時は本当にノーブラになった。
ブラ紐やブラ透けが、まったく見られなくなったからだ。
千夏さんがブラをしなくなったことで、あるトラブルに巻き込まれるんだけど
それについては、別の機会で……。
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