新たな関係が生まれる

 ついに千夏さんに、千春さんとの関係を話してしまった僕。

それを聴いた千夏さんは、固まっている。フリーズ状態だ。


「……嘘でしょ?」


ようやく出てきた言葉だ。


「本当だよ」


僕の返事を聴いた千夏さんは、部屋を飛び出した。

リビングにいる千春さんの元に向かったはずだ。僕も急いで追う。



 「母さん!!!」


「あら、どうしたの? 千夏ちゃん?」

千春さんは洗い物をしている。寂しそうな顔はしてなさそうだけど…。


「玲と肉体関係を結んだのって本当なの?」


「……え?」

千春さんは千夏さんを観た後、後ろにいる僕を観る。


「すみません、千春さん。話してしまいました」


「良いのよ。こうなることはわかっていたから」


「母さん、アタシが納得するまで話してもらうわよ!」


「もちろん。でも、洗い物が終わるまで待ってね」


それを聴いた千夏さんは、机の前に座った。

僕はいつも彼女の隣に座るけど…。


「玲は向こう!」

そう言って、真正面の空席を指差す千夏さん。


大人しく従う僕。この件、僕が意見を言う資格はないのだから。


洗い物が終わった千春さんは、僕の隣に座った。

僕と千春さんは、千夏さんと向き合って座っている。


ここからが本番だ。



 「まず訊きたいけどさ、最初に声をかけたのはどっちなの?」

千夏さんが僕と千春さんを観る。


「それはぼ…」


「私よ」


僕が答える前に、千春さんが先に答える。何でそんな嘘をつくんだ?


「母さんが玲を気に入ってるのは知ってた。けど、さすがに手を出すとは思わないわよ。親が娘の彼氏に手を出す…。ありえないでしょ。何考えてる訳?」


「………」

千春さんは答えない。


娘が親に言う言葉遣いじゃないけど、それだけ千夏さんは怒っていることになる。


「母さんの胸にデレデレする玲にも問題はあるけど、母さんの責任のほうが重いわよ。大人なんだから。…最初に声をかけた理由を聴かせて」


少し間が開いた後、千春さんは答える。


「それは……、寂しかったからよ」


「え?」


「千夏ちゃんは、私が息子を欲しがっていた事を知っているわね。それにあなたが玲君と付き合いだしてから、私は1人でいる時間が増えたの。だから…」


「声をかけたって訳ね? わかったわ。……次は玲、あんたよ」


斜め前を観ていた千夏さんは、真正面を観る。


「あんたは……」


「千夏ちゃん!!」

千春さんが突然叫び、千夏さんの言葉を遮る。


「何よ、邪魔しないで!!」

千夏さんはブチ切れている。


「私が悪いの。私が引くから、玲君を攻めないで!」

千春さんが涙声で懇願してきた。


僕は自分でやった事の尻拭いすらできないのか…。情けないな。


「アタシもそれで解決すると思った。でも無理なのよ」


「無理? どうして?」

千春さんが千夏さんに尋ねる。


「玲が納得しないからよ。玲が母さんを気にする限り、解決しない。

あたしが玲に訊きたかったのは『母さんとの肉体関係を忘れられるか?』なの」


これは僕の口から言わないとな…。それも正直に。


「ごめん…、自信がない」


「でしょうね。簡単に忘れられるなら、母さんの胸にデレデレしないと思う」


痛いところを突かれたな…。


「あと1つ訊きたいのは『アタシとの交際はどうするか?』だけど…」


「僕は…、千夏さんとの交際を続けたい。ワガママを言っているのはわかってるよ」


「そっか…」

千夏さんは微笑んだ後、腕を組んで考え出した。



 「玲、母さん。2人でやる時は、アタシも混ぜなさい!」

腕組みを止めた千夏さんが、僕と千春さんを観て言う。


千夏さん、何を言ってるんだ?


「どういう事なの? 千夏ちゃん」

千春さんもわかってないようだ。


「アタシだって、母さんには世話になってるわ。娘として、母さんの希望を叶えてあげたい。当然、彼氏の玲の希望もね。でもアタシも我慢したくない。なら、3人でやるのがベストじゃないかしら?」


……とんでもない流れになってきたな。

これなら、千春さん・千夏さんの相手ができるから、僕は文句ない。


「千夏ちゃん、それで良いの?」


千春さんの顔色が、さっきよりも良くなっている。

3人とはいえ、関係を維持できることを喜んでくれてるようだ。


「アタシは玲に満足してもらいたいの。…これ以上は譲歩できないわよ」



 これで僕の心配事はなくなった。2人が完全に納得したとは思えないけど、悲しむ顔を観ることはなくなるはずだ。


この方法を提案してくれた千夏さんに感謝しないとな。


「さて、これで玲の悩みは解決したでしょ? ……やりましょうか」


千夏さんは僕を観た後、千春さんを観る。


「場所は……、母さんのベッドで良いわね?」

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