彼女が寝てる中、僕の心配事は消える?

 千春さんにゴムありの本番を望まれた僕。

嬉しいけど、どうすれば良いのかな?


「もしかして、私の妊娠のこと気にしてる?」

千春さんに訊かれる僕。考え込んでいるから、疑問に思ったんだろう。


「まぁ、それもあります」

それも気になるけど、一番は…。


「この間言った事、ちゃんと覚えてるのね。偉いわよ玲君。けど、その心配は無用よ。私だって考えてるから♪」


「てことは…」


「そうよ。ゴムとピルは一緒に持ってるの。それに、玲君はさっき車の中で出したから、出したとしても少ないはず。量は少ないほうが、リスクは減るものよ」


そうか…。じゃあ、そっちの心配はいらないな。となると…。



「玲君の一番の心配事は、千夏ちゃんでしょ?」


「…やっぱりわかりますか?」


「もちろん。彼女を差し置いて、私と本番をするんですもの。気になって当然よ」


「そうなんです。僕はどうすれば良いんでしょう?」

今の僕がやってることって、浮気なのでは?


「千夏ちゃんのことは私に任せなさい。母親ですもの。…それよりも」

ちょっと不機嫌な顔になる千春さん。僕、なんかしたか?


「何ですか?」


「私と遊んでいる時に、千夏ちゃんのことを考えるなんて妬けちゃうわ。

これからは、そういうのは禁止ね。わかった? 玲君」


今までの千春さんなら、こんなこと言わないはずだ。

さっき素直になるって言ったけど、その影響か。


「はい。わかりました」



 お互いクールダウンしてしまった。もう1回遊ぶか?

そう思った時、千春さんの部屋の扉が小さく3回叩かれた。


「良いわよ~」

千春さんはジーンズを急いで穿く。


僕はどうしよう? ベッドの上から離れた方が良さそうだ。


扉が開き、千夏さんが顔を出す。


「母さん、玲ってそこにいる?」


「うん、いるよ」

隠れるのは不自然なので、僕から主張する。


「あんたの靴があるのに、家のどこにもいないんですもの。

だから母さんの部屋を見に来たんだけど、何やってた訳?」


「えーと…」

遊んでました、なんて言えるはずもなく…。


「玲君に部屋の片付けを手伝ってもらったのよ」

千春さんが弁明する。


「片付け? 別に散らかってないじゃない」

千夏さんは部屋を見渡した後、不思議そうに千春さんを観た。


「……棚の片付けだからね。それに、もう終わったわよ」

千春さんにしては、焦りが感じられる説明だったな…。


「なんか必死に説明してる気がするけど、まぁ良いわ。

玲、あんた数学の宿題終わってる?」


「宿題? あったっけ?」


「ほら、ってことで多く宿題出されたじゃない。あれのことよ」


「……そういえば、そんなのあったね」


数学の田辺先生が、授業中私語が多いことと、小テストの点数が低いことに激怒し

僕達のクラスにだけ多めの宿題を出したのだ。


「…その様子だとやってないみたいね、アタシもだけど。だからさ、明日一緒にやらない?」


「明日? これから僕が宿題を取りに戻っても良いよ?」


「今日は良いわ。アタシ、ちょっと体調が悪くてさ…」


僕は千春さんからが原因で体調を崩していることを聞いてるけど、千夏さんはそれを知らない。


なら、体調不良は今初めて聴いたことにしよう。


「そうなんだ、具合大丈夫なの?」


「ほとんど大丈夫だけど、この状態で数学をやる気にはならないわね…」

苦笑いする千夏さん。


「そうだよね…、わかったよ。明日一緒に数学をやろう」


「ありがと。…アタシの用件は済んだから」

そう言って、扉を閉める千夏さん。



 「危なかったわね、玲君」


「そうですね。あのまま本番をやっていたら、千夏さんに見つかってました」


「やっぱり、玲君と遊べるのは車内だけなのかな…?」

しょんぼりした様子の千春さん。


「………」

今の僕には別案がないので、黙るしかない。



家の中で遊べるとしたら、千夏さんに納得してもらうか、千夏さんも一緒に遊ぶしかないんじゃないか? どちらにしても、現実的ではないね。絶対に。


この禁断の関係は一筋縄ではいかない。そう思う僕であった。

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