まさかの人と対面!?

 金曜の夜、僕の携帯にメッセージが来た。…千春さんからだ。


【明日の朝の買い物に、付き合って欲しいな~】


千夏さんで良いのでは? と思ったけど、重い荷物があるかもしれない。

連絡先を交換した時、何でもやるって言ったしな。用事もないし、受けよう。


―――


なんてとんでもない。僕にできることなら、何でも力を貸しますよ」


(お茶目な母親の思い より)

―――


僕は【わかりました。付き合います】と送信した。


するとすぐに【ありがと♪ 10時にマンション前に来てね】と返信が来た。

めちゃくちゃ重い荷物があったらどうしよう? そう不安に思いつつ就寝した。



 次の日の10時少し前、マンション前に向かうと、既に千春さんは待っていた。


「おはよう、玲君。来てくれてありがとう」


「いえ、大丈夫です」


「私の車で行くから、付いてきてね」


千春さんの後を追い、マンションの駐車場にある軽自動車に乗る僕。

助手席に座ったけど、良かったよね?


僕がシートベルトを装着したのを見届けてから、千春さんは車を発進させた。


「車で15分ぐらいのところにあるスーパーが、1人〇個までのセールをやってるのよ。だから今日、玲君に来てもらったの」


「そうなんですか」

そういう流れなら、重い荷物はなさそうだ。一安心。


「千夏さんには声をかけたんですか?」


「かけてないわ。千夏ちゃん、部屋の片付けをしているのよ。物音がしたからね。

片付けを中断させてまで、お願いすることでもないし…」


「じゃあ…」

千夏さんのお父さんは? と訊こうとしたら…。


「主人にこういう事は頼めないわ。一緒にいると気を遣うから疲れちゃうの」

苦笑いする千春さん。


夫婦仲のことはよくわからないから、これ以上訊かなくて良いや。


「買い物も大切だけど、一番の目的は…、玲君と一緒に過ごすこと♪」

赤信号で停まっている時、僕の顔を観てくる千春さん。


「そ…そうですか…」

好意を寄せてくれるのは嬉しいけど、照れるな。



 千春さんが駐車場に車を止めた。目的のスーパーに着いたか。

来たことないスーパーなので、1人でウロウロすると迷子になるかも?


「私に付いてきてね。少しなら、玲君が欲しいお菓子を買ってあげるけど?」


「子供扱いしないでください。そういうつもりで付いてきたんじゃないんです」

千春さんの力になりたいから、付いてきたのに…。


「ごめんね。…じゃあ、買い物の後にウチでお昼食べない? 何か作るわよ?」


この買い物が終われば、少し早いけどお昼になるな。

このまま断り続けるのも、千春さんに失礼だ。なら…。


「わかりました。お昼はお願いします」


「わかったわ。炒飯にしようと思うけど、玲君良いかな?」


「もちろん。炒飯好きです」


「良かった」


その後、千春さんの後ろに付くことで、1人〇個のものを2人分ゲットした。

炒飯の具材も、一緒に購入してくれた。



 買い物袋を後部座席にある収納ボックスに入れ、再び助手席に乗る僕。

僕のシートベルト装着状況を観て、千春さんは車を動かす。


「そういえば、今日土曜日ですよね? 千夏さんのお父さんはどうされてます?」


「『夕方頃に戻る』と言って、朝早くから出かけたわ。

お昼よりちょっと早い今なら大丈夫よ」


「そうですか…」

会ったら気まずいから、いないのはありがたいな。



 マンションの駐車場に着き、車から降りる僕と千春さん。

千春さんは後部座席の収納ボックスから、買い物袋を取り出す。


「千春さん。それ、僕が持ちます」


「良いの? ちょっと重いわよ?」


「お昼作ってもらうので、それぐらいはさせて下さい」


「ありがとう。お願いするわね」


買い物袋を受け取る僕。…ちょっと重いけど、問題ないな。



 千夏さんの家の前に着き、千春さんが扉を開ける。

その時、玄関先で見知らぬ男性と鉢合わせた。


その男性は出かけようと、靴を履く途中のようだ。


「……和人かずひとさん。どうしたの? 夕方頃まで戻らないはずじゃ?」


まさか、この人が千夏さんのお父さんか?

千春さんよりちょっと年上かな? 真面目そうで堅物に見える…。


「忘れた携帯を取りに戻っただけだ。…千春、その子は?」


こんなタイミングで会う事になるとは…。僕、どうなっちゃうの?

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