彼女を本当の彼女にする

 アニメ映画を観終わってから、ファーストフード店で昼食をとる僕と千夏ちなつさん。

その昼食中に「ねぇ、れい。アタシ達、付き合わない?」と言い出した。


どういうつもりなんだろう?



 「千夏さん、突然どうしたの?」


「ほら、アタシ達。あんな事しちゃったじゃない? だから……さ」


あんな事……。千夏さんの胸を揉んだこと・僕の股間をいじられたことね。


「玲の告白を待つことも考えたけど、さっき手をつながれて我慢できなくなっちゃった。…ねぇ、ダメかな?」


上目遣いで観てくる千夏さん。最高に萌える場面だ。


「本当に僕で良いの?」


身長は平均以下だし、頼りがいもないはずだ。

千夏さんに合う相手は、他にもいると思うけど。


「玲じゃなきゃ嫌なの」

子供っぽく、駄々をこねるように言う千夏さん。


「ありがとう。僕も千夏さんを彼女にしたい」

言い終わってから思ったけど、恥ずかしいこと言ったよな…。


「嬉しい。アタシの片思いだったら、どうしようかと……」

千夏さんは涙ぐんでいる。僕の承諾がそんなに嬉しかったのか。


僕も千夏さんのために頑張ろう。千夏さんの彼氏として誇れるように。


こうして、僕と千夏さんは正式に付き合う事になったのだ。



 千夏さんは落ち着いた後、スマホをいじり始めた。


「今ね、母さんに連絡してるの。『玲が彼氏になってくれたよ』って」


「そっか…」

報告されるのは、ちょっと恥ずかしいな…。


「チケット代を出してくれた時『千夏ちゃんなら絶対大丈夫』って言ってくれたの。半信半疑だったけど、玲はOKしてくれた。母さんはこうなることをわかっていたのかしら?」


千夏さんのお母さんは、僕が千夏さんを気にかけていることを知っていた。

なら、千夏さんにそうアドバイスする理由はわかるけど、根拠が弱い気がする。


真相は、かな。



 千夏さんの彼氏になったなら、千夏さんのお母さんについて知っておきたい。

ここまで距離が縮まったんだ。良い機会だろう。


「今更になるんだけど、千夏さんのお母さんって、何て名前なの?」

変わらず『千夏さんのお母さん』呼びでは違和感がある。


千春ちはるよ。アタシの名前のは、母さんが決めたの。父さんはまったく関与してないらしいわ。男の子が生まれてたら、どうなったかしらね?」


男の子が生まれても、変わらず千春さんが名付けたかもしれない。

だって、千夏さんと初めて話した日、あのように言っていたし。


―――


「母さん、あんたのことが気に入ったらしいよ。ってね。『息子が欲しい』って言ったのを前に聞いたことあるわ」


(空からブラが!? より)

―――


『息子が欲しい』って言う人が、名付けに関与しないことがあるか?

僕は考えられないけど、夫婦次第かもね。



 千夏さんのスマホが鳴る。

内容を確認した千夏さんは、僕にも見せてくれた。僕に見せていいのかな?


【おめでとう、千夏ちゃん。勇気を出して告白したんだよね。偉いよ。

あさっての月曜の放課後に、玲君をウチに呼んでね。記念パーティーをやるから】


「明日やらないのは、父さんが家にいるからでしょうね」

千夏さんが補足する。


「記念パーティーか…」

何で千春さんがテンション上げてるの?


「そういう訳だから、玲。よろしく」


「喜んで」


千夏さんは再び千春さんに連絡する。



昼食を食べ終わった僕達。これからの予定は決まっていない。


「千夏さん、これからどうしようか?」


「そうね…、本屋でも行って、新たな漫画探しでもしましょうか」


「良いね。行こう」


僕達はごみを捨てた後、店を出た。





<<最終回みたいな雰囲気ですが、まだまだ続きます♪>>

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