彼女にデートに誘われた

 千夏ちなつさんから少年漫画好きであることを聞いて以来、話すことが増えた。


学校内で話すことはもちろんだけど、お互いの家に行って漫画トークをすることも珍しくない。感想を言い合うだけでも、かなり楽しい。


あまりの急展開に「今村君と古賀さんは付き合ってる」という噂がクラス内で広まっているみたいだけど、千夏さんはただの友達だよ。勘違いしないでほしいな。



 そんなある日、千夏さんから声をかけられた。


「今週の土曜か日曜、空いてる?」


「どっちも大丈夫だけど…。どうかしたの?」


「ほら、あの漫画がアニメ映画化したじゃない。一緒に観に行きましょうよ」


え? これってデートの誘い? 心の中で大はしゃぎする僕。



 千夏さんとは漫画トークはするけど、アニメの話はしたことないんだよな。

漫画好き=アニメ好きにはならないからだ。


「千夏さん、アニメ見るんだ?」


「原作愛を感じる作品ならね。綺麗な作画・キャラに合った声優・カッコイイ演出あたりを重視してるかな」


「僕もその3つは重視するよ。どれも外せないよね」


「でしょ? さすがれい。わかってるじゃない」



また共通の話題ができた。喜びたいけど、1つ問題が…。


「あの漫画、内容がうろ覚えなんだよね…。復習しないと」

他作品とストーリー・設定がごっちゃになって覚えきれない。あるあるだよね。


「だったら、今日ウチで復習しましょうよ」


「ありがとう。お邪魔させてもらうね」



 放課後、千夏さんの家に着いた。


玄関で千夏さんのお母さんが出迎えてくれた。


「いらっしゃい。今村君」


「お邪魔します」


「玲。アタシは着替えるからリビングで待っててくれる? その後アタシの部屋ね」


「了解」


千夏さんは、足早に自分の部屋に向かって行った。


僕は千夏さんのお母さんの後に続き、リビングに向かう。



 リビングに着いてすぐ、千夏さんのお母さんに声をかけられた。

手で着席を促されたので、座ることにした。


その後、彼女は僕と向かい合うように座った。


「ねぇ、2人って、付き合ってるの?」


予想外の質問に戸惑う僕。


「いえいえ。千夏さんはただの友達ですよ」


「ただの友達? それはあり得ないわね」


「え?」


「同じ女同士だからわかるわ。千夏ちゃん、今村君と話す時とても楽しそうなの。

君のことが好きなはずよ。…告白してみたら?」


告白か…。考えたことがなかった。

千夏さんが気にならないというと嘘になる。…どうするべきなんだろう?



 「玲! 着替え終わったから、アタシの部屋に来て!!」

千夏さんが部屋付近で叫んでいる。


「ほら。行ってあげなさい」


「はい。…では」

僕は千夏さんのお母さんに頭を下げた後、千夏さんの部屋に向かった。

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