彼女の無茶ぶり

 好奇心で、半開きになっている古賀さんの部屋を覗いた僕。

その部屋にあったのは…。



 ん? 普通の部屋だよな? 古賀さんが僕に「ぶっ殺す」と言うほど

部屋を見られるのを嫌がっていたけど、この部屋のなにが問題なんだ?


「何で仲良くないあんたに、部屋を見られないといけない訳? マジ最悪」


古賀さんは怒り狂っている。100%僕のせいだ。

今の僕が何を言っても、火に油だろう。黙って静観しよう。


「マジ最悪」以降、ずっと黙っていた古賀さんがようやく口を開いた。


「今村、あんたの部屋も見せなさい!!」


え? どういう事?


「古賀さん、それどういう意味?」


「アタシだけ部屋を見られたら不公平じゃない。あんたの部屋も見れば平等よ」


無茶苦茶だ。怒りを抑えてもらうには、どうすれば良いかな?


「古賀さん。僕の家は遠いよ? それでも良いの?」

遠いとわかれば、面倒になって行くのをやめるはず。


「今村君。嘘はおばさん感心しないわね。○○小学校あたりに住んでるんでしょ?」


古賀さんのお母さんが、リビングから出てきて言った。

僕を助けるどころか敵になるなんて…。何でなの?


「○○小学校辺りに住んでるの? すぐそこじゃない。何で嘘ついた訳?」

再びキレる古賀さん。


この家から徒歩10分未満で着ける距離なんだよね…。


「えーと…」

言い訳しようにも、言葉が出てこない。


「もういいわよ。今から今村の家に行けばいいわけだし」

そう言って自分の部屋に入った古賀さん。準備でもするのかな?



立ち尽くしている僕に、古賀さんのお母さんが耳打ちしてきた。


「今村君、無理言ってごめんなさい。あの子、素直じゃないから親として応援したいの。あの子はああ言ったけど、君と仲良くしたいはずよ」


「そうなんですか? 僕にはそう思えませんが…」


「君と仲良くなりたくなければ『部屋を見せて』なんて言わないはずよ。あれは照れ隠しなの。…どうしても部屋を見せたくないなら、私から言うけど」


多少? 散らかっているけど、他人に見せられないほどではない…と思う。

古賀さんのお母さんにお土産をもらったので、無下にはできない。


「いえ、大丈夫です。古賀さんに僕の部屋を見てもらいます」


「ありがとう」



 古賀さんのお母さんの返事後すぐ、古賀さんが自分の部屋から出てきた。

髪はさっきよりとかした感じで、ツバが長い帽子を持っている。


「じゃあ母さん行ってくるわ。…今村。案内してちょうだい」

玄関で靴を履き終わった古賀さんが、履いている途中の僕に言う。


「わかったよ。…今度こそお邪魔しました」

僕の挨拶と同時に、古賀さんは先に玄関から出て行った。


「さようなら、今村君。また来てちょうだい」


古賀家を出る僕と古賀さん。さて、僕の家に向かおうか。

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