第4話 配属願い先決定

貴音の部屋から出て、案内の紙に目を向ける。ちなみに奏は部屋の外へと行ったらすぐに、どこかえ消えてしまった。


そして、眞奈はなんとなく曲がった角で、少し背の低い女性にぶつかってしまい、彼女がもっている書類などを散らばらしてしまうと、眞奈は焦って謝る。


「あぁ!?ごめんなさい!!大丈夫!?」


「……!」


怒っているのか何も返さない。たが、怒ってはいないだろう。なぜなら、彼女の顔は穏やかであった。なのに何故、言葉を返さないのだろうか。否、返せないのである。


「口だけパクパクさせて…どうしたの?」


「……」


「もしかして、喋れない?」


「…!」


勢いよく首を縦に振り、同意をする。そう、彼女は喋れないのである。

眞奈はすぐさま、周りの紙を掻き集めて、彼女に渡し、顔を見る。目立った外傷はない。何か病気だろうか……と考えたが、それ以上は考えなかった。


「…!!」


「いいわよ。私が曲がり角をよく見ないでぶつかっちゃたのが悪いし…」


「……?」


眞奈は彼女を凝視した末に気付く。彼女はとても若々しく、可愛いという彼女にとって重大な事に。歳は同じくらいだろうか…?


「ねぇ?ちょっと失礼だけど…貴方って、今いくつなの?」


「……!」


器用に書類の束を保持して、両手でピースをする。22歳ということだろう。眞奈は21なので、驚くことに年上である。


「年…上、それで…この、可愛いさ…」


「……?」


「名前を知れないのが悔いね…」


彼女は懐から一枚のカードを取り出し、眞奈に見せる。そこには名前が書いていた。


黒崎クロサキ 最中モナカ

 所属・暗殺隊 位・最高幹部。


「最高…幹、部?」


「……」


驚いた事に、最中は最高幹部の一人らしい。詳しくはわからないが、最中の所属は暗殺隊で、部隊とついているのだから、他にもいるのだろう。


「決めたわ…私を、貴方の隊に入れさせて!」


眞奈は、心に一つ決めてさっき貰った紙に、彼女の所属している隊の名前を記入する。そして最中は、とても驚いているような、焦っているような曖昧な顔をする。


「……!!」


「でも、最中ってなんか違うわね…もなか、もな……モナ!!モナにしましょう!」


「……!??」


最中は困惑に顔を染めあげて、困り果てる。そこに、何故かは知らないが、丁度、美奈川が通る。


「あ〜眞奈。あまり最中を困らすのはやめてくれないか?」


「あ!心珠じゃない。丁度良いところに!」


そう言いながら、紙を彼女に見せる。


「ん?なるほど。彼女の部隊に入るのか。そうか…」


心珠は困ったような顔をして、考え込む。眞奈はなんだろと、思って素直に待っていた。


「まぁ、良いか。それでは、眞奈。今より君は、暗殺部隊、だ!」


「やった〜!……え!?副…隊長?」


「すまないが、詳しい事は後ろのアフロに聞いてくれ、彼は…「俺は、坂鬼サカオニ オサムだ!よろしくな」」


「坂鬼…修。なんて呼べば良いのかしら…?」


「修でいいぞ?所属は違うが、将来有望の奴だ!少しは面倒見てやるよ!」


彼は陽気に言うが、心珠は片手で頭を抱えている。


「こんななりでも、一応幹部だ。それなりに顔は利く。何かあれば彼に言うといい。それでは、私は任務についての会議があるのでな」


そう言って急ぎ足で、廊下を通り抜けて行った。


「……!?」


「う〜ん、修…坂鬼先輩でいいかしら?」


「おっ?それいいな。採用!よくよく考えてみれば、先輩なんて言われた事がないな」


「坂鬼先輩はここに入って何年なの?」


「俺か?俺は、四年程前からだな。そういえば、お前をスカウトしに行った奴いるだろ?そいつは開設当初、つまり俺より前からいるらしいぜ?」


ちなみに、最中は完全に、話している二人に挟まるタイミングを見失って、立ち尽くしている。


「ちょいとお二人さん。最中さんが困っていらしてるぜ?あと、坂鬼。お前はそう安々と俺の情報をバラすな」


「あ!貴方は!!」


「おい!?ま、待て、待て!!落ち着け!?ここは施設内。街中とは勝手が違う。被害も違う。一旦落ちつけ!?」


「なによ。一人じゃ私に負けてた癖に」


「五月雨?あんなに息巻いてたのに、負けてたのか?お得意の戦術はどうした」


「真っ向から潰された。というか効いてなかった。こいつ見たいのは初めてだ」


「随分と面倒でかつ、強力な能力を持ってるようだな?」


「俺の経験則だが、こういうのは能力を二つとか三つとか持ってってるぞ」


「これは本当に良かった」


二人のよくわからない話に最中と首をかしげながら、二人が話し終えるまで立ち尽くした。

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