第2話 起床。そして勧誘
「あぁ…ここは?」
「あら、起きたかしら?まだ頭はボーッとするかしら?それなら寝てて大丈夫よ」
眞奈は目が覚めると見知らぬ場所に、見知らぬ人となっていた。
そこは病院のようにも見えるが、どこか違和感を感じる造りとなっていた。
目の前の彼女には、さっきのこともあるので流石に警戒していた。
だが、その人を見ていると、眞奈の目線に気付く。
「そんなに警戒しなくていいわよ。私じゃ、貴方には勝てっこないし。平和が一番良いわよね?」
「……ここは、どこ?」
「医療館の北棟よ。貴方の家からは大分遠いいけどね。あと、私は
「え、うん?わ、私は、眞奈。愛梨、眞奈」
「そう。それじゃあ。眞奈ちゃん、身体が大丈夫なら、寝起きで悪いんだけど、少しついてきてくれるかしら?」
そう言ったのを聞き立とうとした眞奈だったが、思いの外身体の調子が悪かったらしく、倒れそうになってしまった。
「あ…」
「おっと、大丈夫?やっぱりまだ、休んでおいた方が良いんじゃない?」
「いい。行く」
「そ、そう。ならこの松葉杖を使って。少しは楽になると思うわ」
「ありがとう」
――――――――――
「ここよ。少しここに座って待ってて?」
「わかったわ」
道中色々と見たが、眞奈の知らないものばかりで、外の景色も眞奈にとって、何一つ見覚えがないものとなっていた。
「どこなの…ここは…」
思わず、口からそんな言葉が溢れ出る。
眞奈はかつての不安定さを取り戻そうとしていた。
「眞奈ちゃん。入って大丈夫よ」
「はい…」
その指示に素直に従って部屋に入る。
中は思ったよりも質素だが、その中でも威厳を感じられる、程よくスッキリした部屋だった。
「君が愛梨眞奈であってるな?」
そう話す人物は、意外にも小さかった。眞奈は特別大きい身長というわけでもないのに、パッと見でも彼女は眞奈はよりも大分小さいだろう。
「えぇ、そうよ」
「……そうか。まず、一つだけ言っておこう…」
なんだろうか、後に何が続くか。眞奈は無意識に身体を強張らせていた。
「急にここへ連れて越させた事、並びに暴行や薬物を使用した件など、様々あるが…すまない。あれは、私としては非行だった」
その言葉は、意外にも謝罪だった。これには驚き現を抜かしていた眞奈だったが、意識を戻して言う。
「…そう。それで、ここはなんなの?私はなんのために連れて来られたの!?」
「意外な質問だ。聞いていた人物とは大分違うが…まぁいいか」
失礼な物言いを、眞奈は無視しながら次を待つ。
「そうだ。自己紹介がまだだったな。私は
「なんでそんな遠回しに言うのよ。ココちゃん」
「貴音、その話は後だ。それで君が連れて来られた理由から話させてもらおう。まず、第一に君の指輪だ」
「指輪?」
眞奈の嵌めている指輪は青色をしており、珍しいことは珍しいだろう。だが、それだけだ。盈とお揃いで買った物でしかない。
最も、眞奈にとっては何よりも大事な物だが。
「君は、裁きの幽霊という名を聞いたことはあるか?」
眞奈とっては初めて聞く名であった。当然思い当たる節があるわけもなく困惑する。
「……ない」
「そうか、その幽霊が身に付けていた物。それが青い指輪だ」
「…それじゃ、私はその裁きの幽霊と間違われて、連れて来たの?」
「それだけじゃない。むしろ、もう一つの方が重要だ」
そう言って心珠は手を前に出す。
ゆっくりと握り、そして開く。そして、それを見ると段々と手は形を、崩していき、完全に手ではない別のなにかとなっていた。
「これは、能力。一部の人間が持つ特別な力だ」
眞奈は思わず息を飲む。目の前の異様な光景に、頭が思考停止する。
「そして、君にはこの、能力を持っている。無意識の内にな。これが何なのか、それは不明だが、強力なモノであることにかわりはない。特に君の能力は、だ」
「簡単に言うと、強い能力が眞奈ちゃんにはあるってことよ?」
「でも、私はそんなの全く知らなかったけど…」
「言っただろう。無意識の内に、と。それに、君はあの五月雨と言う男と会っているだろう?」
「あの、ムカつく…」
「そう言ってやらないで欲しい。彼は少しでしゃばり過ぎなだけで、優秀だったからな」
「だった?それってどういうことよ」
「今は気にしなくていい。後でわかる。それよりも、君についてだ」
「私?」
「度々言っているが、君の能力は危険だ。今なんともないことから、発動には怒りが必要ということだろうか。まぁ、いい」
少し話がややこしくなってきている。彼女は何がしたいのか、眞奈は人知れず身震いをする。
「簡潔に言おう。君には私達の組織に入って欲しい。無論タダではない。ある情報を君には随時伝えよう」
「その情報って?」
「君の…君の、夫。盈の死について」
眞奈はその名を聞いて、拳に力が入る。否、拳だけではなかった。
今は、不安定。安静にしておかなくては、すぐにおかしくなってしまうだろう。
「み、みっちゃんは、なんで死んだの…」
「今、言えることは、誰かの陰謀だろう。それ以外はまだ、分からない。だが、確実なのは、彼は君を庇って死んだ。そして、その裏では君を殺そうとする者がいることだろう」
「……そう」
「これは単なる偶然だが、私はあの近くにいた。最も助けられるような場所ではなかったがな。そしてそれを見ていた。確実に、あの車は君を殺す気だった。君は何者かに追われている」
「なんで…私が…」
「言っただろう。有名なんだ『裁きの幽霊』とやらは。青色の指輪をしていることも周知の事実だ。恐らくそれが原因だろう」
最早呪いのように思える青色の指輪だが、眞奈が外す事は未来永劫ありえはしないだろう。
「取り敢えず、今話したい事は話した。これ以上は君が持たないだろう。今日は休め」
「じゃ、行きましょう?そうね…眞奈ちゃん、私の部屋に案内するわ。今日は私の部屋で我慢して頂戴?」
そうして今日の終わりは、貴音に案内してもらって、ベットへと直行し、沈むように眠った。
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