第十五話 攻略:裏庭ダンジョン(1)
第二階層へ足を踏み入れた俺は、もし自分が小さな蟻一匹となって巣穴の中を探検したらこんな光景になっているんだろうな、となんとなく思った。
机と椅子を積み上げその上に乗ればなんとか届きそうな高さの天井と、人が十人くらい横並びになれそうな、広さの洞穴。巣穴。視界は土色と、それが放つぼんやりとした明かりで埋めつくされている。
スマホを開き、DSが教えるダンジョンの情報に目を通してみれば、自身が第二階層に身を置いていることがわかった。
第一階層の蟻一匹一匹の戦闘力はゴブリンより少し強い程度だった。そこまで強くない分、凄まじい数がいたのだが、竜喰と俺の前ではカスと言わざるを得ない。
やはりこの刀をあの報酬部屋で手に取ったのは間違いなかったと、独りニヤつく。こいつとなら地元のダンジョンを全て制圧することも、夢じゃない。
とはいえ一度休憩しようと、
自分で言っておいて意味不明なのはよくわかる。この前、ヴェノムとの会話の中でも『銃は容量不足で使えない』という話があったが、これはこのことに関わってくる話だ。
どうやら俺たちダンジョンへ突入するプレイヤーは、スマホと着ている衣服以外、ダンジョンへ何か物を持ち込むことができないらしい。
そこで食料や水など、攻略の際に必要な物資を持ち込む際には、スマホに1万5000円の湯呑みと竜喰を『収容』したように、必要なものをスマホに入れておかないといけない。
『ダンジョンシーカーズ』をダウンロードしたスマホは、いわゆるアイテムボックスとしての機能を有しているようなのだ。
しかし別のゲームと違って、DSのスマホには『容量』という概念があり、その容量は収容するもの自体の大きさや数に依存するわけではなく、その物自体の構造や概念に依るらしい。
水や食料といったものは持ち込めるのだが、近代的なものはあまりにも必要とする容量が大きく、持ち込むことができないのである。
例えば銃や車など、複雑な機構を持ち様々な技術を結集して作られるようなものは、容量が大きすぎて収容することができない。
しかし銃に関しては……そこまで複雑な構造でもないはずなのに、なぜ容量不足に陥るのかわからない。不思議だ。仕組みや基準がはっきりしていない。水や食料だって、細かく注目してみればものすごく複雑だし、説明なんて全部できないんだけどな……
ちなみに竜喰はその強さの割にめちゃめちゃスリムだ。これも謎。
しれっと意味不明な技術を持ち出してくるDSに、ああまたかと諦めに近い納得をしながらも、全力で利用する。
今回の攻略に当たって、役に立ちそうなものは片っ端から詰めてきた。水や食料、ぶん投げる用の石、ガスボンベ、包丁など。家にあるものじゃ、大したものはなかったかな。
この容量システムの都合から、自分の持ち込む物資の量とダンジョンで収容するアイテムとのバランスが、お金になるポイントをアイテム収集して稼ごうとした時に頭を悩ます要素の一つとなるらしい。俺はソロでガンガンいけるが、もっと日数を費やして攻略する場合もあるのだろう。多分。
しかし、他プレイヤーがどんな感じでやっているのか想像がつかない。できれば情報が欲しいが、最近ヴェノムのアカウントが削除されて俺のフレンド欄がゼロ人になった。伝手がない。
情報も欲しいが、しばらくはダンジョン攻略に集中すべきだろう。スマホのアイテム欄を閉じて、今度はステータス画面に移行する。
プレイヤー:倉瀬広龍
性別:男 年齢:18 身長:174cm 体重:62.3kg
Lv.35
習得パッシブスキル
『白兵戦の心得』『直感』『被覆障壁』
習得アクティブスキル
『秘剣 竜喰』
称号
『命知らず』『下剋上』『
SP 110pt
「うおっ……9も上がったのか」
あの蟻の群れを滅ぼした時何回かスマホの通知がなっていたことには勿論気づいていたが、こんなにも上がっているとは思わなかった。加えて、新たな称号を得ていることを確認する。
称号『魔剣使い』
魔剣の使い手に与えられる。スキル『魔剣術:壱』を習得可能にする。
称号『魔剣使い』は、竜喰を使ったことにより得た称号のようだ。というか壱ってなんだよ。壱って。このゲーム洋風っぽいし、普通ローマ数字で『I』とかじゃないのか。
「称号がスキル習得に関わるタイプか……よし」
110SPという纏まったSPも手に入ったことだし、習得しようと思っていたスキルを一気に取っていく。
一階層の敵は大したことなかったが二階層の敵はどうかわからないし、油断は禁物だ。
E級とD級でここまでの差があるとは思わなかった。ヴェノムの言っていた話を信じるのならば、東京のプレイヤーはすでにC級ダンジョンの攻略を行なっているらしい。EとDでここまでの差があるのだから、Cならもっと強くなるだろう。
Bなら? 果てはAなら? まだまだこんなところで満足し、停滞してなどいられない。
自身の戦闘能力のアップデートは必要だ。いくら竜喰が強いと言っても、使い手である俺が怠けて弱かったら話にならない。
強く決意しながら、スキルを習得していった。
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