事務員さん
07 出会いの印象? 営業だなって思いました
私、角野がYUKINO商会に23歳で雇われ、営業補佐 兼 事務員として働き始めてから七年になる。
始めは社長と二人で。
その後、営業として小宮さんも加わり現在は三人になっている。
小宮さんが来てからは大分楽にはなったけど
それでも仕事は多いし、突発的に問題を起こしまくるアノ社長のせいで、ワタクシは秘書でもオカンでもありません……て状態でもある。
しかもうちの事務所がある雑居ビルはオフィス街にあるので、ほぼ毎日のように「何かを買いませんか」と、営業の方が来ては去り。
去っては現れ、とキリがない。
一年前のあの日もそうだった。
*******
ドアをノックする音が聞こえたので「はい、どうぞ」反射的に返事をすると、ガチャっとドアを開けて入ってきたのは、どこをどう見ても営業マンだった。
(チッ、いま忙しいのに)
心の中で毒づいてから笑顔を作り、担当か社長をという彼に定番の言葉を返す。
「今はどちらも不在なので…申し訳ありません」
するとふと私の背後を見た彼は、こう尋ねてきた。
「あの、後ろの方は社長様ではないのでしょうか」
・
・
・
「はいそうですよ。シャチョーさんですよ」
そう言いたいのは山々だが、うちの社長様は飛び込み営業が大嫌いなんです。
うっかり取り次いだりしたら一日中嫌味を言われてしまいます。
なのでこれまた定番の「いえ、違いますよ」というお断りをしようとしたら、後ろの社長席から声がした。
「いいの角野さん。奥に入ってもらって!」
……なぜだ。社長の知り合いだったのか?
それなら訪問者リストに書いといてくれ。
少しだけ、なんでだと固まっていたが、営業くんが私の顔を見ていることに気づいた。しかもよく見れば彼も驚いた顔をしている。
なんなんだ一体。
でもまぁ社長が良いと言ってるんだし、と思い直した私は
社長には「分かりました社長」
営業くんには「ではこちらにどうぞ」
それぞれに声を掛け、事務所の奥にある応接室へと彼を案内したのだった。
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