呪詛

 泣き続けてから何時間経ったのか…辺りは暗くなっていた。少し泣きつかれてきた頃、「ほら、茶でも飲んで落ち着け」と多邇具久たにぐくがお茶を渡してきた。お茶が美味しい。なにかぽかぽかする感覚…。


 少し落ち着いてきた。


 そして、一番聞きたかった事を聞きそびれていたので鼻声ながらに問いかけてみた。


「…ねぇ…。それでさ…。私に何をしろって言うの…。?」


 多邇具久はその場で立ち上がり話し出した。


「我は封印されている間、力を蓄え、思考した、おぬしらを助けたい一心でな。そして、生まれ変わりではない隔世遺伝で呪いを持ったおぬしが現れた。そこでなんとなく思いついたんじゃ。神術を使い呪いと呪いをぶつけてみたら対消滅させれるかもしれんとな。」


「な、なんとなくって。というより、そんなことどうやって…?」


「おぬしを過去に送る。」


「…え?」


 つい声が出てしまった。


「おぬしが神術を使い呪いを祓うんじゃ。」


「待ってよ。過去って??ってか私、神術なんて使えない…。」


「呪いは元を絶たんと意味ないからな。神術に関しては大丈夫じゃ、おぬしが使えることは既に確認しておる。」


「私、そんなこと…。」


 全然思い当たらない。


「思い出してみぃ、になった時のこと」


「でもあれはたまたま…」


「あの言霊を使えるのはだけじゃ、呪文の途中であんなこと言ったからになってしまっただけで一般人があんなこと言っても何も起こるまい。そもそも、封印されてとっくにが見えておる時点で神術を使っとるのと同じじゃよ。」


 ???


 ということは私が見ていたのはもしかして幽霊…?『ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!』と驚きたかったがもう慣れた。


「とにかくそういうことじゃ、出発は…。今から頼みたいのじゃが…。」


 展開が早すぎる、今説明を受けたばかりだ。


「ちょ、ちょっとまって!!今からは早いよ心の整理はついてないし、そもそもちゃんとしたやり方がわからない!」


「やり方は簡単じゃ、まず、我がおぬしを過去に飛ばす、そして、おぬしは神崎神社を探し我とその子を見つけ出す。見つけたらおぬしの今だ!!と思うタイミングで「襾壞戻かえれ」と言って呪いをぶつけて対消滅。その時代の我に元の時代に戻してもらい全て終わりじゃ。」


「今だと思うタイミングって……。投げやり過ぎじゃない?」


「その時が来ればわかる!!としか言えんのじゃ…なんせ何の呪いか我にはわからんしな…。」


 この男適当過ぎる…。


「何の呪いかわからないって!!数百年調べてたんじゃないの!?」


「気にするな!大丈夫じゃ!!きっとうまくいく!!」


 ここに来て信用していいのか分からなくなってきた。


「きっとって……。まぁ、でもそこを置いといたとして今じゃなきゃダメな理由は??」


「それを聞くか…。」と多邇具久は顔をしかめた。


「落ち着いて聞いてくれ…。おぬしの祖母、神崎かんざき紀代きよはもうすぐ死ぬ。」


 …もういっぱいいっぱいだ。


「早くしてほしいからってやめてよそういう冗談…」


「恐らくそろそろ容態が変わる頃じゃろう、亡くなる前におぬしには呪いを打ち砕いてほしいのじゃ。」


「いや…そんなこと…」


 今朝の祖母の姿が過る…。いつもとちょっと違う祖母。何か察していたのかもしれない。


 ぷるるるる…ぷるるるる…


 突然、電話が鳴った…家政婦の翔子しょうこさんからだ…。

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