神社
行く当てもなく走った先にたどり着いたのは神社だった。
ここは放課後に舞とよく来ていた場所。また体が勝手にここへと誘ったのだろう。ここの神社は人も寄り付かない山奥にあって参拝客も居ないのか廃れ切っている。なんていう神社だったか文字もかすれて見えない。とにかく私みたいなのが隠れるのには最高の場所だった。
今日一日走り回ったせいかどっと疲れた。神社の縁側らしき場所に座り込む。
「私って最低だ…」
そんな言葉しか出てこなかった、これは勝手な想像かも知れないが、
「私もいっそ…」
上を見上げてそうつぶやいた瞬間、視界の上からにょきっとカエルの顔が現れた。
「そう悲しそうな顔をするでない」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
私は上げたこともない声を上げてきゅうりを見た猫のように飛んでいた。相手もあまりの驚き様にびっくりしている様子だった。誰も居ないと思っていたのだカエルの顔が覗き込んで来たらそりゃあ誰でも驚く。
「お、おじさん誰ッ!?」
冷静な判断をせずにおじさんだと決めつけてしまった。
「いや、まだおじさんと言われるような歳ではないのじゃが…いや、まて、どちらかと言えばおじいさんかッ!ははははッ!」
そう言われて少し冷静になって観察してみる。神主のような服にカエルの面を被った人が大きな声で「はははッ!」と高らかに笑っている。声と自らを「おじいさん」と言っていることからして成人男性らしい。にしては体の線が細い…。少しずるいと考えてしまった。いや、こんな事考えている場合ではない。どう考えてもおかしい…そもそもここは山奥だし舞と私を除けばここを知っている人はこの町の老人ぐらいだろう。
そうこう考えているとカエル面の男性が口を開いた。
「おぬし、こう考えておるな…。…こんなイケメン見たことないとなッ!あ、我は仮面を付けておったわ!!はははッ!」
『あぁ、こういうタイプの人か…。めんどくさい。』と心の中で放った。昨日から色々とあって心の整理がつかない内にこんな奴と出会ったんじゃあ、胃がもたれてしまいそうだ。
「こほん、自己紹介が遅れたな、我はここの神社の"神"じゃ。」
???????
頭がはてなでいっぱいになる、何を言っているんだこの人は、私をからかっているのだろうか?思考が追いつかない、けどなんか段々とイライラして来た。
「おじさん、私をからかってるなら大概にしてくれない?怒るよ?」
と言いつつも半分怒っていた。
「お、怒るでない、怒るでない。そ、そうじゃ!少し我の力を見せて証明してやろう。」
カエル面の男がそう言うと変な呪文を唱え始めた。なんか、気味が悪いし長ったらしい。変な人とは関わらないのが鉄則だ、帰ろう…。
「ねぇ、私帰るね…」
「おぬし!!待て!それはッ!!」
カエル面の男性が慌てて私を止めようとした瞬間、周りの景色が、おじさんが"大きく"なっていった。
!?
私は声を出そうとするが声が思うように出せない、
「げこッげこッ」
こ、これは!?と自分の手を見ると緑色の指のようなものと水かきのようなものが付いていた。そう、周りが大きくなったのではなく、自身が"カエル"になって小さくなってしまっていたのだ。
「余計なことをするでないわ…戻してやる…」
そう言って短めの呪文を唱え始め…
「元の姿に変えれッ!」
カエル面の男性がそう言うとスッと元の姿に戻った…。
…
私は完全に呆けていた。
「ま、まぁ、予想外ではあったが我の力、認めてくれるな?」
『認められるかッ!!』と言いたかったがあんなのを見せられたんじゃ認めざる負えない…。
「え、う、うん…。」
「よし!それならばいいんじゃ!結果良ければなんとやらじゃな!!ははははッ!」
私にはどうしても納得がいかないことが一つあった
「うん。認める。おじさんのことは認めてあげる。でも、何で私をカエルにしたの!?もしかして人をカエルに変えちゃうだけな神様なの!?」
私は問い詰める。
「い、いやぁ、あれは手違い…というか…うん。おぬしが悪い!!おぬしがあんな事いうからじゃ!!」
開き直って私のせいに…。
「あんなことって何!?どこが悪いの!?」
「い、いや~だって、「私かえるね」って」
?
「は?わけわかんない!それのどこが悪いの!?」
「いや、だからおぬしが「私、カエルね」って言ったから…」
「…は??……。っぷ!あははははは!!!カエルってあのカエル?」
あまりのくだらなさに拍子抜けして笑ってしまった…。こんなに心から笑うのはいつぶりだろう。
「んふふふふ!!ただのダジャレじゃん!!お、お腹痛い!!あははは!!」
ツボというものにハマるとなかなか抜け出せないものだ2分間ぐらい笑っていたかもしれない。
その間カエル面の男性は「あはは」と少し引いた様子だった。
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