帰宅

 帰宅してから自分のベットに直行する、疲労感と謎の安堵感から直ぐに寝てしまった。


「ご飯できてますよ~!」


 という声が聞こえた気がしたが無視して寝てしまっていた…。




 ……み~んみ~ん…み~んみ~ん。



 蝉が今日もうるさい…。起きなければ…。朝になるとおばあちゃんが早くも起床していた、『神崎かんざき 紀代きよ』私のおばあちゃんだ。おばあちゃんは目が見えない。あとは、基本無口で何を考えて居るのかわからない、が、優しい人だ。


 …私にはおばあちゃんしか家族がいない。


 父と兄は火事で、母は私を生んでからすぐに…おじいちゃんは病気で三年前に亡くなっている…。私はまだ子供で出来ることが少ないからと言う理由で安くで紹介された住み込みの家政婦の人がおばあちゃんと私の面倒を見てくれている。言わば母親代わりだ。あ、もちろん家政婦の人は一人ではない、住み込みで交代交代みてくれている。お金はおばあちゃんの年金と親達が残して行った資産でやりくりしている。


 この暮らしに不満はない。おばあちゃんがいるだけで心の支えになる。


「おはよう、まだ学校行ってなかったのかい?もうお昼になるよ?」


 おばあちゃんが足音を聞きつけたのか不思議そうに言う。時計に目をやると11時50分頃を指していた。朝ではなかった……。


「うん、今日は行きたくない」


「そうかい?…毎日学校行ってるんじゃ飽きるかもねぇ…今日はゆっくりしなさいな」


 私の声色から察したのか優しい声をかけてくれた。すると、外出用の車椅子を準備していた家政婦さん『高山たかやま 翔子しょうこ』さんが私に気付いた


「あ、眞之まのちゃんおはよう、昨晩は大丈夫だった?あ、そう言えば、夕飯の残りが冷蔵庫に入れてあるからお昼はそれ食べててね、おばさんは紀代さんを病院に連れて行ってくるから。」


 病院と聞いて心臓が跳ね上がった


「あの…おばあちゃんどこか…」


 翔子さんは察したのか私の心配そうな顔を見て


「あ、あぁ!大丈夫大丈夫!いつもの定期健診よ!」


 そうか、良かった。自分のことでいっぱいいっぱいで…何か嫌なことが起こる気がして…勝手に話を飛躍させてしまった。


「そ、そうだったね!おばあちゃんいってらっしゃい!」


「いってくるね、眞之もゆっくりやすみなさいよ」


 いつもは優しく微笑むだけの祖母が行って来ますの挨拶をするなんてとも思ったが私は「うん!」と無邪気な声で返事をし見送った。


 でも、私の笑顔は少し引きつっていたと思う。

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