5
「桐生さん、お待たせしました」
「遅いよ」
台所に置かれていた窯出し用のひっかき棒や、小型の斧、一メートルほどのサイズのスコップを手に、良樹と足立里沙はカラクリを操作して再び桐生と美雪の二人と合流した。
「よし、それじゃあ足立さんは僕たちが持ち上げた隙に、それを突っ込んで」
「分かってる」
「じゃあ行くぞ。せーの!」
今度は桐生と良樹の二人だけで鉄の扉を持ち上げる。
「今!」
部屋の隅で見ていた美雪の掛け声で、里沙は思い切りひっかき棒を突っ込んだ。続けてスコップも間に滑り込ませる。
「これで、いける?」
「さあな」
とりあえず桐生と良樹、二人で鉄の扉との隙間に挟んだひっかき棒とスコップに梃子の原理で体重を掛ける。あんなに重かった鉄の扉が少しずつ上がっていき、
「一気に行くぞ」
「はい」
桐生の合図で二手に分かれ、両方の端から持ち上げていって、壁側に思い切り倒すことに成功した。
扉で塞がれていた箇所には、ぱっくりと大きな暗黒が口を開いていたが、あの謎の腕は出てこなかった。
少しライトで照らしてみる。
「どれくらいありますかね」
ほぼ真っ直ぐ下へと掘られた穴のようで、縄梯子が下りていた。
「ざっと五メートル程度か。どうする? 俺は行くが、女子チームには待っててもらうか?」
良樹は美雪を見る。その目は一緒に行くという決意を固くしていた。
「みんなで行きましょう」
今度は
桐生を先頭にして、女子二人、最後に良樹という順で縄梯子を下りる。最初に下りた桐生が強度を確かめながら一番下に到達すると、周囲をライトで照らして安全を確認し、
「いいぞ」
足立里沙、美雪という順で梯子を使う。
最後になった良樹は梯子の縄を掴みながら、新しいものではないけれどかなりしっかりした縄梯子だと感じた。
下の部屋はコンクリートで周囲を覆われていて、ところどころに剥き出しになった鉄骨が見えた。どうも丁寧な仕事とは言えず、誰かが後でここに造ったものだろう。どうやら桐生も同じ考えのようだった。
ドアがない出口をライトで照らす。そこは通路というよりは大きなトンネルのようで、高さは四メートルほど、幅も三メートルはあった。
良樹の脳裏にはあの謎の巨大な腕が友作を掴む光景がまた過ぎったが、
「何が出てくるか分からんが、危険だと思ったらすぐ逃げるんだ」
そう言った桐生を先頭に、そのトンネルを進み始めた。
良樹もライトで照らしてみたが、奥はまだまだ新しい闇が続いていた。
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