4
「おい、黒井。こっち手伝ってくれ」
「いいですけど、危なくないんですか?」
下までやってくると、桐生たちが床を大きく塞いでいる鉄の扉を持ち上げようとしていた。
「危ないかどうかは、開けてみないとわからん。ただ、一本の腕には一人しか掴むことができんだろう」
そう言って桐生は笑う。冗談のつもりなのか、本気なのか、良樹にはよく分からなかったが、笑顔を返して美雪と里沙が握っていた方の取っ手に手を掛ける。
「じゃあ、せーのでいくぞ」
せーの、と四人で声を合わせ、思い切り持ち上げる。五センチ程度だろうか、
「何か持ってくるわ」
確かに棒でも挟むことができれば持ち上げることができそうだ。
上の部屋に戻っていく里沙に、良樹も続いた。
それにしても足立里沙はこういった場面でも恐怖したり、体が怯んだり、思考停止に陥らない。常に冷静さを失わないのは何故なのだろう。
自分より数センチ低い彼女の背中が、
「棒でも板でも、何でもいいんだけど」
「分かってる」
木箱に樽、戸棚と本棚以外に、何か使えそうなものがあるだろうか。
「あのさ」
「何?」
「ここ、冷蔵庫って置いてなかったっけ」
「え?」
「冷蔵庫。こんなところにちょっと妙だなと思ったんだけど」
今は冷蔵庫がない。けれど確かに最初に階段を下りる前に良樹はそれを見ていた。
「そういえば」
「仮説なんだけどさ、ここは同じような別の部屋なんじゃないかな。本当の部屋はこの上にあるとか」
二人で天井を見上げた。板が並べてあるだけで、足元の床と同じようにも思える。
「もしそうだとしても、そんなに薄い訳はないわ」
「そうだろうけど、ただ」
良樹は戸棚の後ろや本棚の後ろを探る。
「これの裏って」
思い切り本棚を押した。スライドして階段の入口を塞ぐ。本棚により隠れていた壁が露わになると、そこには小さなレバーがあった。
「たぶん、これだ」
良樹はそれを押し下げた。
がくん、と音が鳴り、微かな振動を感じる。震度一から二程度の地震のようだが、それはすぐに止んでしまった。
「黒井君。こっち」
先に部屋を出た里沙に呼ばれ、良樹もそちらに向かう。
部屋の隣はやはり、元の台所だった。
「これで一つ館のカラクリは解けた訳ね」
「おそらくこういう仕掛けが色々隠されているんだろう。そして、誰かがそれを使って僕たちをあそこに閉じ込めようとしたんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます