レイン
雨も降らなさそうな晴れた天気にレインコートを着た人が歩いているのを見かけた。日の光が苦手なのか所々、光から逃げように建物の木陰で休みをとってはどこかに向かって歩いている。
ずっと目の前で歩いており、追い越したい気持ちはあるものの、こんな晴れた空の下でなぜレインコートを着ているのですか? と質問したいとうずうずしていた。
レインコートを着た人が急に立ち止り、ぼくは思わず戸惑ってしまった。もしかしてぼくのことを不審者かと思われたんじゃないのかと、身体から不安の汗がにじみ出てきた。
その人が急に振り返ると同時にぼくは目を瞑り、「ちがいます、まちがいです!」と声を上げてしまった。今にして思えば何に怯えそんなことを言ってしまったのかと恥ずかしくなってしまう。
しばし目を瞑っていたが、目をゆっくり開けるとその人はいなくなっていた。
「どこへ行ったんだろうか」
ぼくはあたりを見渡し、その人が行きそうな場所を探して走っていた。だけど、その人を見つけることはできなかった。レインコートを着た人が誰なのか全く知らないうえ、レインコートを脱いでしまえばたとえ通り過ぎていても気づかないのだ。
ぼくはため息をついた。何をやっているんだろうな。自分に呆れる。何を期待しているのか、ぼくは正直笑うことしかできなかった。
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