第2話 これが俺の力だぁ!
国王は俺の能力に度肝を抜かすどころか、偽装スキルか何かではないかと疑った。
だから本当の力を見せろと、訓練教官であるアンドレという人にも馬鹿にされつつ、俺は訓練所に赴いた。
「さて、あれだけの力を数字だけで見せたんだ。本当の力というものを見せてもらおうか。
それと、あまり調子に乗るなよ。どうせ……勇者のそれ自体も偽装してるんだろ?
まぁ、いい。この俺が一から魔法を教えてやるから、せいぜい頑張るんだな」
非常に俺を舐めきった態度。まぁ、分かる。
こんな力、誰も信じないなんてことは、このステータスを見れば誰にだって分かることだ。
「ふーん分かった」
そうすると、頭の中でピロンと高い音が響く。ステータス関連だろうか。俺はその音が気になり、徐ろにステータスを開いた。
「なんだ……? ステータス」
「どうした? 今更自分のステータスに自身を持てなくなったとか言わないよな? この期に及んでそれは通用しないぞ」
「いや、今ステータスでなんか新しいの入ったから……」
「は……?」
──────────
スキル:
☆NEW!
全ての魔法と、オリジナル魔法の作成を可能に。
魔法作成における上限無し。
───────────
なにがきっかけだったんだろう。さらに意味不明な力が目覚めてしまった。アンドレにはそのまんまの意味で伝えようか。
「全ての魔法と魔法の自作が可能になったんだけど」
「ッチ……ふさげるのも良い加減にしろ! 全ての魔法と作成が可能だって? そんなもの、この世のどこを探しても、歴史上にも存在しない! いい加減自分が役立たずで雑魚と認めろ……」
「分かった。とりあえず証拠を見せてからでいいか?」
「あぁ、全く期待しないがな」
まぁ、そりゃそんな反応するよな。だって何もしてないのに、さぁ訓練始めるぞって時に能力追加って……。
俺でもそんな奴が目の前にいたら同じ反応するはずだ。チーターだぁ! ってな。
「じゃあ、改めて。基礎中の基礎から教えてやる」
「よろしくー」
「先ずは、無属性弾だ。単に、衝撃波を纏った気弾を手から発射する技だ。
魔法を扱える者は皆これを最初に学ぶ。魔力の容量によって威力と連射速度が変わるからな。
使い方は、体内の魔力を体外に勢いよく捻り出せ。無属性弾は、普通の魔法とは少し違う衝撃力にのみ補正がかかる技だから、イメージしろとしか言えんのだ」
最初は無属性弾という物で、アンドレは正面に片手を構えると、勢いよく魔力の弾丸が一直線に発射された。
ただ現代にある銃と比べれば弾速は大分遅く、鉛の弾丸では無いから貫通力もないときた。
要は説明通りの衝撃力にのみ補正が掛かる技のようだ。
「なるほど」
「じゃあやってみろ」
さて、どうせ俺には魔力は無制限にあるんだし、せっかくなら魔法作成でアレンジもしてしまおう。
ついでに技名とかも作ったりして。
俺はまず無数の小さな魔力の粒子が集まる集合体をイメージし、それを片手の平に具現化させる。
次にその粒子一つ一つを小さくとも強力な魔力弾にすることをイメージし、最後にそれを連打で発射することを想像する。
「行くぜ!
魔機関砲。そう唱えれば、片手から小さな魔力弾がまるで戦闘機の機銃レベルの速さで連続的に発射される。
衝撃力ではなく、破壊力を想定して作ったおかげで、一瞬にして訓練場の地面が凸凹にへこむ惨事となった。
ちょっとやりすぎたか。
「……。凄まじい連打弾だな。まぁ、これくらいの速さならベテランの魔法士なら可能ではある。」
「あらそう」
「じゃあ次は、炎魔法だな。最もポピュラーな技でファイアブラストという魔法がある。対象に小さな爆発を与える魔法だ。
ファイアボールという炎の弾丸を発射する魔法もあるが、それは先程の無属性弾の応用のため省く。
ファイアブラストはボールと違って撃ち出すのではなく、周囲の魔力を操って発動すると同時に魔力を遠距離から炎属性に変えることで、攻撃魔法の魔力反応が起こり、爆発を引き起こす。と言った感じだ」
なるほどなるほど。つまりこう言うことか。
俺はこれまたアレンジを加える。炎の爆発というのだから、もっと派手にやってやろうと思う。
周囲の魔力を操る方法は、手に指揮棒を持つイメージで、空気中に見える魔力の流れを制御し、好きな位置へ魔力を運ぶ。
このやり方で俺はとにかく異常な量の魔力をガンガン掻き集め、最後にこれを一気に炎属性へと変える。
すると、俺の視界では魔力が次々の炎属性へ変わる瞬間が見えるのだが……魔力は空中で小さな爆発を引き起こしながらだんだんと規模を膨らませて行く。
最後に甲高い金属音が耳に障り、さらに爆発力を強めて行く。
ちょ、ま、やっべ。
流石にこの威力。訓練場が吹き飛びかねないので、俺はすぐにその魔法を中止した。
「……。おっとこれは目眩か? なにか嫌なものを見た気がするな」
「どうした?」
「何でもない。早く次だ!」
「あ、はい」
「次は、氷魔法だ。もう簡単とは言わない。氷の結晶を作って見ると良い。魔法の中で自然現象を起こすことは、魔力さえあれば誰にでも出来る。
しかし、それを塊にするのはより精密な魔力制御が必要だ。ただ魔力を注ぐだけじゃあ、氷魔法を発動しようにも責めて吹雪くらいだろうな。さぁ、やってみろ」
氷結晶ねぇ……。俺は魔力制御と言われたので、頭の中で凍った水。正方形の氷を頭に思い浮かべる。
いくら、なんでも出来る魔力と魔法作成があっても、想像力が無ければ本末転倒ってやつだ。
だからより繊細に、精密に氷のツルッとしたあの感覚まで全てを頭にイメージし、いざ発動する。
と思ったら同時に想像していた氷の塊が爆散した。
はて、何が起きたのだろうか?
「ほう……これは驚いた。天候を変えちまうとは恐れ入った……はは」
「あら綺麗ですね」
ふと空を見上げると晴天の青空から雪が降り始める。
雪って確か雲から降り注ぐものの筈だが、こいつをよく見ればどこからともなく雪結晶を生み出し、それを降らしているように見える。
こいつぁ、異常気象なんてレベルじゃねえぞ。
「よし、切り替えて行こう! おう! 次は風魔法だな。いいか? 別に本気出さなくていいから。軽くお前が『魔法』を使えるという証明さえしてくれりゃあいいんだ。
まぁ、お前が只者じゃないなんて今や分かりきったことだが、最低限の力さえあれば国王も信じてくれるだろう。な?」
次は風魔法。軽くと言われてもどうしたらいいのやら。力はいくらでも使えるけど、抑え込めないのは盲点だった。練習すればいけるか? なんつって今からじゃ無理だけどな。
さて風魔法風魔法っと。とりあえずドライヤー風邪をイメージして……
風魔法を発動した。そうすると、俺の背後、恐らく王国の外側から何か凄まじい風の音が聞こえてくる。
所謂、竜巻が近づいてくる音ってやつだな。
「あ? なんの音だ……?」
その音はもう王国内に入ったのだろう。どこからともなく人3人分の瓦礫が俺とアンドレの間にガシャンと金属音を鳴らして落っこちてきた。
「……いや〜? なんの音でしょうねぇ?」
こんなでかい瓦礫が空から降ってくるのはそれは相当大きな竜巻だと分かる。しかも飛んできた勢いも相まって、これは王国崩壊レベルのハリケーンということだろう。
なので敢えてシラを切る。
「って竜巻じゃねえか! てか滅茶苦茶でけぇ!」
そうやっぱりハリケーンだった。それもあり得ないデカさの。
あぁそう。ええとつい最近みた映画の『嵐の中に』に似てるなうん。
そんな呑気なことを考えていると、けたたましいサイレンが王国中に鳴り響く。ただ普通のサイレンではなく、国民保護サイレンってやつだ。あの音嫌いなんだよなぁ……。
『超大型ハリケーン接近中! 直ちに避難して下さい!』
「そういやお前の名前は……」
「稟獰だ」
「早く止めろ!」
「えーっとこれには……」
空間無視・時間操作!
多分これで止まる。
そうすると俺の方に吹き荒れていた暴風が嘘だったかのようにぴたりと止まった。
原理はこう。なんかやべー嵐を、遠距離から止めた。以上。
「止まったね」
「貴様ァ! あと少しでここまで吹き飛ぶところだったぞぉ! 少しは使えると思ったが……まさか我々の国を滅ぼすのが目的ではないだろうなぁ!」
「はぁ〜? 最初まで役立たずって言ってたのになんですかそれ〜」
おっとついカッとなって反論してしまった。
「な……! クソ……ふざけやがって。次は雷だ。ほどほどにしろよ」
ふざけてんのはどっちだゴラァァ!!
俺は内心ブチ切れながら容赦なく雷魔法を発動する。
我怒りの雷撃をくらうがいい!!
すると一瞬にして空が暗雲で覆われれば、真っ黒な雲から瞬く間に閃光が走ると、耳をつんざく爆音を鳴らして一撃で訓練場を焼け野原にするどでかい雷が落ちた。
「あ〜あ〜あ〜! 何してんだクソ野郎!!」
【真面目に改訂】完全無敵!やる気が無さすぎる男の異世界冒険譚 Leiren Storathijs @LeirenStorathijs
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