閑話 元相棒の決心

ーカラオケから約5日前ー


「それじゃあ初めていこっか」


そこは弓弦の通っていた中学から少し離れた高校の弓道場。

そこには新入生が並んで座っていた。


「今日からここにいるみんなも弓道部の一員になるわけだけど、取り合えずしばらくは基礎練習ばかりで弓引けないからフラストレーション溜まると思うけど、的前に上がれば一気に楽しくなるからそれまで頑張ってね」


今日はどうやら顔合わせだけらしいそのまま部長らしき人物が説明をした後解散ということになった。


「君は.......2組の人だよね?僕も2組なんだけど分かる?」


解散してすぐ帰宅しようとしていた隼人に声をかけてきたのは同じクラスの男だった。


「あー....ごめんちょっと分からない」


隼人が素直に言うと話しかけてきた相手は笑いながら、


「いやーまだ高校入学してから一週間程度だしさすがにしゃべったことない奴の名前までは覚えてないよな、俺の名前は佐藤 大河って言うんだ。これから三年間部活で一緒に頑張ることになるから仲良くしようぜ!」


佐藤が声をかけてきてくれたことは隼人にとっても嬉しいことだった。

何せ中学の友人はみんなテニス部にいってしまったので部活に友人がいなかったのだ。

さらに弓道初心者なので一緒に練習する友人がいると頑張れる。


「俺の名前は佐々木 隼人、よろしく大河」


そのまま隼人と大河はLINEを交換し、途中まで一緒に帰ることにした。

どうやら大河は隼人たちの通っていた中学の隣の中学だったらしく帰りの電車の方向も同じだった。

電車の中で互いに高校生活について話していた。


「うちの高校って試験で赤点取ったら追試まで部活禁止らしいぞ」


「え?そうなの?俺ワンチャンやばいかもしれない」


隼人はあまり成績は良くなかったが地頭は良いのでテスト前に詰め込めばどうにかなるタイプなのだが大地はどうやら違ったようだ。


「こうなったら隼人に教えてもらうか.......」


繰り返すが隼人も成績は良くないのでテスト前は詰め込み作業に入るので誰かに教えている時間はない。


「まあ....なんだ?がんばれ」


「見捨てないでくれよー」


隼人はあまり初対面で距離感をつかむのが得意ではないのだが大地のコミュ力が高いので駅に着くまでの短い時間でお互いに軽く弄りあえるくらいの仲になっていた。


「それじゃあ俺の最寄りここだから降りるわ。また明日」


「おうそれじゃあ、また」


隼人は家の最寄り駅で降りる。


「あれ?隼人?」


家に向かう道に出ようすると不意に後ろから声をかけられた。

知った声だったので特に警戒もせずに振り向く。

そこには予想通り、元チームメイトの倉橋がいた。


「おう、久しぶりだな倉橋」


「隼人は北高にいったんだったよな?.......足はどうだ?」


若干遠慮がちに聞いてきた倉橋に苦笑しつつ、


「ああ.....まあ日常生活に問題はないな、じゃなきゃ電車通学なんてできないしな」


「もうテニスはやらないのか?」


「......もう俺は長時間走れないし無理な動きはできないから......でも倉橋、俺はもうほとんどテニスに未練はないんだ。今弓道部に入ってるんだけど弓弦も弓道部に入ったらしいんだ。.....今度こそ俺たちは全国に行く、倉橋はテニスを続けてるんだろ?お前のことも応援してるよ」


本心を初めてしっかり口にしてすっきりした。

あの事故から何に対しても本気になれなかったが最近は心中がすっきりしてきた。

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