第6話部活動見学3
「おーお前が新入生かー」
俺が的場に向かって黄昏ていると入り口の方が騒がしくなってきた。
どうやら着替え終わった別の先輩が来たようだ。
「お邪魔してます」
なんと言っていいかわからず反射でそう言うと先輩たちはみんな笑い始めた。
もちろん嘲笑のような感じではなく単純に俺の返しが面白かったんだろう。
「じゃあ外に他の一年も来てたし説明するか」
そうしてそれから1時間ほど先輩が弓を引く様子を見ながら指導係の先輩が交代で部活について説明してくれた。
普段の部活の流れや弓道について、どれくらいお金がかかるかなど、そして最後に
「最後になるけどもしこの中に弓道やりたいって言う人がいるなら是非弓道部に入ってほしい。
でも中途半端にやるのは許せないから入るからには本気でやってね」
先輩はそれまでのニコニコとした顔を引っ込めて真面目な表情でそう言う。
曰く弓道部を楽な部活だと思って毎年そこそこの人数が入部するらしいが弓を持てるまでは地味な練習ばかりなのでその中でも少なくない人数が幽霊部員となってしまうらしい。
一年生の部活動見学は1時間と決まっているので5時には解散となった。
周りにいた一年は互いに感想を言い合いながら明日はどの部活に行くかなどと話している。
家に帰ると母親からは高校の授業はどうだったかなどと質問がきたが軽く流すと俺は自分の部屋に篭る。
改めて部活について考える。
俺は本当はどうしたいんだろう
隼人とまたテニスをしたいのか?
勉学に専念していい大学を目指したいのか?
それとも......
「あの射を自分のものにしたいのか?」
思考の渦に飲まれていく。
ピロン
机の上に置いてあるスマホから音が鳴る。
見てみると隼人からのLINEだった。
隼人:おーい弓弦〜
弓弦:なんだよ?
隼人:いやーお前高校どうだ?友達できた?
弓弦:まあまあだな誰とも喋ってないけど笑
隼人:あーお前背高くて初対面だと威圧感凄いからな笑
俺にそんなつもりはないのだがこれは中学入学の頃からよく言われたことなので納得はしている。
弓弦:お前こそどーなんだよ?
隼人:俺はまあまあよ
弓弦:なんだよそれ笑
既読はすぐについたがしばらく返信がなかったのでスマホをおこうとすると
隼人:お前部活どうするんだ?
俺はすぐには返信できなかった。
でも隼人とLINEしてみて分かった俺たちの夢はやっぱりもう終わったんだと、
あれから数ヶ月経ってふと気づいた。
もう俺はテニスはやめる。
弓弦:実は弓道部に入ろうと思っている
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