第5話部活動見学2
「是非見させて下さい」
そういうと淳先輩がポケットから鍵を取り出して扉を開けながら言う。
「弓道場は弓とか矢とか高いものも多いし学校の隅にあるからちゃんと毎日鍵をかけておくんだ。朝部に最初に来た人が職員室に鍵を取りに行って午後部は二年の当番が開けるんだ。」
そういいながら淳先輩が中の電気をつけると弓道場の中が明るくなり中の様子がしっかりと見えた。
的の方はシャッターが閉まっていて窓も少なく電気を点けないと薄暗い。
「まあ公立高校であんまり結果も出せてねーからボロっちいがここが俺たち風波高校弓道部の弓道場だ」
そのまま2人の後ろをついていくと
「ああ弓弦お前そっちのシャッター開けてくれないか?」
淳先輩はそういいながら奥のシャッターに手をかける。
俺は断る理由もなく手前のシャッターを掴んで勢いよく上に持ち上げる。
先輩がボロっちいと言った通りシャッターも随分と年数を感じさせる抵抗を見せたが、テニス部でしっかりと鍛えていた弓弦にとってはそこまで重くは無かった。
そして上まで上げ切るとそこにはしっかりと草が刈られた的まで続く道と両脇には木が生えていて俺はまるで絵画の世界に入り込んだかのような錯覚を覚えた。
「シャッターは重いから基本は野郎共で開けるんだ。次は的付けに行くぞ」
そう言って靴を取りに行った淳先輩の後ろについて行く。
朱莉先輩は入り口にある箒で下駄箱の周りを掃除していた。
「こういうところからしっかりするのも大事なんだよ。弓道は弓術ではないししっかり環境を整えてから弓を引くんだよ」
箒を掃きながら朱莉先輩は俺に言う。
なるほどと相槌をうちながら淳先輩が外に出たので急いで俺も追いかける。
「さっきいたところが射場って言って弓矢を射る所であそこの土が持ってある所が的場って言って安土に的を立てるんだ。ここは矢道と言って矢の通り道入る時は手を鳴らして大声で入りますと言ってから入るんだ。じゃないと射抜かれちまうからな」
笑いながら説明してくれた淳先輩の言葉を頭の中で反芻する。
その後も安土への水の撒き方、的の間隔、的の立て方などを教えながら見せてくれた。
淳先輩が教えてくれることを俺は必死に覚えようとするけれど一回で全てを覚えることはできなかった。
「よーし的も付けたし着替えて弓を引くかー」
そう言いながら弓道場に戻る先輩に質問をする。
「他の先輩方は来ないんですか?」
ずっと気になっていたのだが淳先輩と朱莉仙は2年生で2人な訳はないし3年生だっているだろう。
「俺ら以外の2年は今日は当番じゃないから部室で着替えてて普段は3年生は弓道場の更衣室で着替えるからいるんだけど今日は進路の説明会があるから遅れるって部長が言ってたなー」
淳先輩はそう言ってちょっと着替えてくるわと弓道場を出て行った。
朱莉先輩もどうやら着替えに行ったようで俺は1人になった。
特にすることも無かったので射場の真ん中に座り的の方を眺める。
そういえば俺はなんで淳先輩の説明を真剣に聞いていたのだろう。
まだ弓道部に入部すると決めたわけではないのに......
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