第94話:好きの反対は無関心
オルティス帝国では、次期皇帝であるオーブリーの結婚についての号外が配られた。
相手は他国の伯爵家だったが、覚悟の表れとして実家を廃家手続きしての婿入りだと書かれていた。
それには賛否両論あり、潔いとしたものと、国同士の繋がりをふいにする愚行とするものが有った。
それら全てを
王配のホープとは、恋愛感情は無かったが確かな信頼関係を築き、二男一女をもうけた。
第二夫や情夫を持つ事も無く、家族仲は良好だったと後世には伝えられた。
偶に、本を持ったオーブリー皇帝と王配のホープが街中を散策していたとされる記録が残っているが、その本が何だったかまでは記載されていない。
そしてそのような100年後の事など当然知らないフローレスは、屋敷で呑気に茶会を開いていた。
と言っても、屋敷内で働く使用人達を日替わりで招いている茶会だ。
本日は特別ゲストとして、マティアスが居る。
「そういえばうちの両親がオーブリー第二皇女殿下の披露宴に行ったそうなのですが……」
話の種にと、マティアスは軽い気持ちで話し始める。
「王配……まぁ、まだ王ではないのですが、とにかく配偶者と言うより、従者のようだったそうですよ」
場の空気が凍ったのに、手に持った紅茶に視線を落としているマティアスは気付かない。
「元々能力を買っての
一口紅茶を飲む。
「更に元は貴族でも、廃家手続きをして平民としての結婚ですしね。それを許可した皇女殿下の判断が吉と出るか凶と出るか」
ここまで言って、マティアスは顔を上げた。
「えぇと、何か変な事言いましたかね?」
マティアスが戸惑った声を出す。
使用人達はアワアワと焦り、フローレスは無表情で固まっている。
フローレスは深呼吸をしてから、ニッコリと微笑んだ。
「自分で選んだ道ですから、
いや、従者扱いならそこまで酷くないかしら、と笑うフローレスの笑顔は、とても綺麗だった。
「ホープ様ですからね。直接殴られでもしなければ、気にしないかもしれないです」
「非を認めない性格を直さないと、これからは駄目ですよね~」
「執事長も家令達も居るので、孤軍奮闘シテクダサイ」
「能力はあるけど、人を見下した態度を直さないと嫌われそうです」
「あの得意気な顔むかつきますよね!」
一人のメイドがホープの表情を真似し、それを見て他のメイド達が笑う。
辛辣な台詞に、マティアスの笑顔がひきつる。
特にフローレスと一緒に薔薇の街へ来てしまっていたメイド達は、かなり容赦が無い。
「お兄様とは仲が悪かったのですか?」
マティアスが質問する。
「仲が悪くなるほどの関わりは無かったですね。でも、貴族などそんなものでしょう?」
フローレスは王子妃教育で身に付けた、完璧な笑顔を浮かべた。
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