第45話:ヒロインの座
「私が王子様に惚れられたのが問題なのよね?」
ルロローズが目の前で項垂れるベリルに声を掛ける。
「私がベリル様の妻になると、他国との関係がギクシャクするから駄目なのよね?」
「あ、あぁ、多分」
ベリルが自信なさげに答える。
「このままじゃ、ベリル様の妻にはお姉様がなり、私は
ルロローズは悲劇のヒロインになりきって、瞳に涙を溜めてベリルを見た。
「そんな!そんな横暴が許されてたまるか!」
ベリルはルロローズを抱きしめた。
二人は、根本的な間違いに気付いていなかった。
他国の王子がルロローズに惚れたのが問題なのでは無く、オルティス帝国の第三皇子が自分に横恋慕した上に逆恨みしている、という
しかしベリルは、本気で第三皇子がルロローズに惚れていると勘違いしていた。
ルロローズは、自分の嘘を皆が信じていると思っていた。
なぜなら、ルロローズは可愛い可愛い愛される存在だから。
「お姉様が王子妃に相応しく無いと証明されれば良いんですよね?」
ルロローズは、ベリルの腕の中でポツリと呟く。
「え?」
俯いていた顔を上げ、ベリルと視線を合わせたルロローズは、瞳を潤ませる。
「お姉様は、先生と不貞をなさっていたと
得意気に言うルロローズたが、「糾弾」という言葉は、先日の王子妃教育で覚えたばかりである。
自分は頭が良いアピールをしたいのだろう。
「お姉様はよく先生と出掛けていたわ」
実際には、教授の所で伯爵夫人も交えて四人で会っていたのだが、そんな事は勿論ルロローズは知らない。
迎えに来た馬車内に、伯爵夫人が乗っていた事も。
調べようとも思っていない。
なぜなら、小説では【ホワイト】と【緑の君】は不貞行為を行っていたから。
「そうか。それでは、父と母に言って婚約者候補から外して貰おう」
ベリルが言うのを、ルロローズは「駄目よ!」と止める。
「そんなの握り潰されちゃうわ!だって私を他国に嫁がせた方が国の利益になるもの!」
ルロローズの目から涙が零れ落ちた。
二人は、誰にも止められないが、衆人環視の中での不貞告発が良いだろうと結論づけた。
ルロローズは卒業パーティーを提案したが、それはベリルが却下した。
なぜなら「その時には、婚約者が決定している」からだ。
フローレスを婚約者候補から外すには、その前でなければいけない。
「卒業式にしよう」
ベリルが言うと、ルロローズは渋々了承した。
ルロローズの「本当は卒業パーティーなのに」と言う呟きは、ベリルの耳には届かない。
ベリルは権力を使い、卒業式での答辞の座を手に入れた。
壇上で言葉を発する事の出来る立場である。
その時に、フローレスが首席である事も知った。
「やはり生意気で可愛げの無い女だな」
普通は褒めるべき事なのに、ベリルはそう
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