第41話:動き出した者達
【ピンキーは、ある程度緑属性の適性が向上したのを機に、先生の訓練を辞める事にした。
先生は、ベリアル王太子の婚約者である姉のホワイトと不貞を働いているのだ。
そんな相手に何かを習うなんて、ベリアル王太子を裏切っているようで嫌だった。】
「てめぇはどうなんだって話ですよね」
侍女がフローレスの小説を読み上げてから、悪態を
本日、ルロローズがアダルベルトの緑属性の訓練を断ってきたので、そんな場面があったはずだと読み返していたらしい。
「もう少し言葉を選んでくださいね。でも、その意見には賛成よ」
伯爵夫人が優雅にお茶を飲みながら言う。
「小説の中だから許されるのであって、実際にやられたら、鼻で笑ってしまいましたよ」
アダルベルトが黒い笑顔で笑う。
「何て言って断って来たんだい?」
教授が楽しそうに、アダルベルトに質問する。
「私ぃ、お姉様と不貞してるような人に習いたくないのでぇ、もう来なくて良いです!」
アダルベルトがルロローズの
「フローレス様。貴女の妹は、帝国と戦争でもしたいのかしら?」
伯爵夫人がフローレスに問う。
「私に聞かないでください。彼女の行動は、私の理解の
フローレスは、気持ちを落ち着ける効果があるはずのお茶を口に運んだ。
ここは、教授の研究室である。
いつもの面子に、アダルベルトから招集が掛かったのだ。
ルロローズはフローレスの目を盗み、第二王子と一緒にアダルベルトの泊まるホテルへ突撃したそうだ。
姉である第二皇女も一緒に面会したのに、先程の台詞を平気で口にしたそうだ。
普通に考えて、有り得ない話である。
しかも第二王子が一緒では、国の総意と取られてしまってもおかしくない状況である。
「やっと友好国の歴史としきたりを覚えて、後は敵対国の社会情勢だけだと思ったのに……。帝国に喧嘩を売るなどと言語道断ですわ」
ルロローズの王子妃教育は、間違い無く落第点だろう。
「大丈夫ですよ。私と姉の胸の内に仕舞って置きますから。それが理由でフローレス嬢が王子妃に選ばれても困りますからね」
「ありがとうございます」
アダルベルトの言葉にフローレスは素直にお礼を言ったが、教授は意味深に口端を持ち上げた。
「困りますか」
声をひそめて教授が聞く。
「困りますね」
アダルベルトも小声で答える。
「それでは隠れ家は、オルティス帝国内で探しましょうか」
フローレスの侍女が同じように声をひそめて、二人の間に入る。
お互いにしか声の聞こえない距離での会話に、突然第三者が参加したのである。
二人が驚かないはずがない。
「うわぁ!」
「うおぉっ!」
いきなり現れた侍女に、アダルベルトと教授は、同じように
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