第23話:予想外の展開
「ローズ!待っていたぞ!」
フローレスが侍女の開けた扉を通り店内へ入ると、まだ扉の外に居るルロローズへと、第二王子が声を掛けた。
まるでフローレスが見えていないかのようである。
「ベリル様!」
ルロローズの方も、フローレスを突き飛ばすように押し退けて、店の中に入って行った。
「え?」
まさかルロローズが突き飛ばすとは思っていなかった為に、フローレスは思いっ切りバランスを崩してしまう。
急いで侍女が支えようとしたが、非力な侍女ではフローレスの手に引っ掻き傷を作っただけだった。
「大丈夫ですか!?」
倒れて横座りになっているフローレスへ、侍女が跪くように寄り添う。
「まさかの、私が怪我したわよ」
フローレスは、コッソリと侍女へと囁いた。
え?と侍女が心配そうに眉根を寄せる。
自分が付けてしまった傷の事ならば、フローレスがこんな言い方をしないと知っているからだ。
「捻ってしまったみたい。立てないのよ」
フローレスの手が、スカートの上からそっと自分の足首に触れた。
「いつまでそんな所でみっともなく
立ち上がる事の出来ないフローレスへ、第二王子がイライラと怒鳴る。
「そんな事をして俺の気を引こうとしても、俺の気持ちはローズにしかないからな!無駄な事をせずに早く立て!」
尚も怒鳴り続ける第二王子と、床に座り込んでいるフローレスを、客も含め店内に居る全員が見ていた。
店員は、オロオロと何も出来ずに狼狽えるだけだった。
第二王子の前で、フローレスに手を貸す事は出来ないからだ。
なぜなら皆の認識は、フローレスが第二王子の
「この国では、怪我をしている女性は助けるものでは無く、罵倒するものなのですか?」
誰もが綺麗だと素直に認めるであろう、凛とした声が店内に響いた。
奥の貴賓室へと繋がる通路から、女性が姿を見せた。
緑の瞳に、緑の髪。真っ白な肌。
ここまで鮮やかな緑色を持っているのは、隣国の皇族だけである。
しかも第二王子が来店しているのに支配人が接客をしているという事は、もっと身分が上の人物という事になる。
あまりの大物の登場に、フローレスも足の痛みを忘れて眺めてしまっていた。
「まさか教授、判り易い見た目って……違うわよね?」
フローレスの呟きに侍女は、釘付けになっていた人物から自分の主へと視線を動かし、また元の人物へと戻す。
「確かに、これ以上無い緑属性の教師です」
フローレスにしか聞こえない位の小声で、侍女も呟いた。
予想は半分合っていて、半分間違っていた。
かの美女は、自分の後ろに控えていた男性を室内へ招き入れた。
「あそこに倒れている女性を助けて差し上げて」
「はい。かしこまりました」
翠の瞳に翠の髪の美丈夫が、スッと前へと進み出た。
フローレスの近くに来た男性は、片膝を突いてしゃがみ込む。
「いやぁ、予想外の展開でしたね」
どこか
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