第14話:夢見る乙女達
学園が始まり、数日が経過した。
第二王子とフローレスとルロローズは、三人とも同じAクラスである。
教室ではいつも第二王子とルロローズが一緒におり、フローレスは窓際の席で一人本を読んでいる事が多かった。
「ごきげんよう、フローレス・オッペンハイマー様」
フローレスの前に三人の令嬢が立つ。
侯爵家令嬢と伯爵家の令嬢が二人。
「ごきげんよう。どうなさいましたの?」
特に仲良くもない三人がいきなり声を掛けてきた事に、フローレスは戸惑ったが顔に出す事は無い。
「貴女、ご自分の婚約者を妹に取られて悔しくないの!?」
周りには聞こえない配慮をする常識はあるらしい令嬢は、それでも高飛車にフローレスへと文句を言ってきた。
「場所を変えてもよろしくて?」
フローレスは静かに席を立った。
「え?お二人が婚約者候補なのですか?」
近くの空き教室に移動したフローレスは、三人の令嬢に今の自分達の立場を説明した。
「なぜか皆様、私が婚約者だと勘違いなさっているのです」
態と困った表情をして、フローレスは首を傾げる。
「でもいちいち噂を否定して回るのもおかしな話ですし、王家が発表していない事を侯爵家が大々的に言うのも……ねぇ」
暗にこの話は吹聴するな、としっかりと釘を刺すのを忘れない。
「それでも私を心配してくださったのですよね。ありがとうございます」
これは、フローレスの素直な気持ちだった。
親同伴のお茶会にしか参加出来なかったフローレスには、親しい友達がいない。
それはルロローズも一緒なのだが、ルロローズは第二王子さえいれば良いらしく、特に不満の声を漏らしているのを聞いた事が無い。
癖のある家族の中で育ってきたフローレスは、真っ直ぐで素直なこの三人を好ましく思っていた。
【昼食は、いつもホワイトが無理矢理ベリアル王太子を食堂に連れて行くのだが、食堂に着くとベリアル王太子は、ピンキーと自分の分を用意してサッサと席に着いてしまう。ホワイトは、それを悔しそうに睨んでから、食堂を後にするのだ。】
「こんにちは。お願いしたの、出来てますか?」
フローレスは食堂の厨房へ声を掛ける。
「はい、いらっしゃいませ。出来ておりますよ」
厨房から受け取ったのは、外で食べられるように工夫されたその日のランチだった。
それを持って食堂を後にする。
食堂の真ん中の目立つ席で、仲良く食事をしている第二王子とルロローズを見る事も忘れない。
「今、睨んでましたわよ」
「王太子……ではなくて、第二王子殿下に無視されたのね、きっと」
「ピン……ルロローズ様の方が、ベリアル様に相応しいですわ」
「あら、ベリアル様は物語の王太子殿下の名前よ」
「あらやだ、私ったら」
食堂では、同じような会話が令嬢達の間で交わされていた。
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