書籍2巻発売記念SS。罪深き男

2024.06.07 レベル0の無能探索者~二巻発売記念WEB特別SS




 ~鈴木日向を見た!クラスメイトAくん~




 荒井凱くんから『レベル0』と呼ばれた鈴木日向くん。彼は氷姫の後ろに座っていて、彼女と名前まで一緒だから嫌でも目立っている。


 そんなある日、俺は見かけてしまった。


 もう暗くなったが、少し暑くなったからアイスを買いにコンビニに出掛けた。


 暗い中、道路の向こうでイチャイチャしながら歩いているカップルを見つけた。


 女は男の腕に絡まって楽しそうに話しながら歩いている。しかも制服からしてうちの学校だ。


 段々近づいて通り過ぎるとき、それに気づいた。


 男は同じクラスの――――鈴木日向だった!


 う、嘘だろ! あんな美女とイチャイチャしてるのか!? クラスではいつもおどおどしてびくびくして、身長もそれなりだがどこか消極的な気の弱いやつだと思ってたのに!


「日向くん~? 今日も美味しかったよ~」


「ああ。俺もだ。それはそうと……詩乃? 暑くないのか?」


「全然暑くないよ? どうして?」


「い、いや……腕がその……」


「え~いいでしょう? こうして君を独り占めできるのはこの時間しかないんだし……ね? ダメ……?」


 う、うああああああ! あんな美女に言い寄られるのか!?


 ウラヤマケシカラン!


「わ、わかったから……それ以上はくっつかないで……」


「うん♡」


 ああああああああ!


 超絶美少女に言い寄られながら、鈴木は困った表情を浮かべていた。




 翌日。


 昨日の鈴木の野郎がイチャイチャしてるのが気になって悶々として朝早くに目が覚めてしまった。


 はあ……。


 やることもないので学校にでも行ってみるか。


 母さんは「あんたが早起きなんて珍しいわね」と言ってきた。


 うっせぇ! 俺だってやるときはやるんだから!


 クラスに着いて早々に、俺は後悔した。何故なら――――鈴木ぃいいいい! お前、こんな早くから来ているのかよ! てか、確か寮暮らしだろ!? ならもっとゆっくり来いよ!


 しばらく待っていると、鈴木が外に向かって手を振る。


 あれか……昨日の美少女か?


 少しして当然のように昨日の美少女が元気いっぱいの挨拶を彼に送って、うちのクラスを通り抜けた。


 やはり同級生だったのか……。


 それからクラスにひんやりと冷たい空気が広がる。


 ――――氷姫。


 あの人には冷たい印象しかなく、何か話掛けても塩対応で誰とも関わろうともしないから、今ではクラスでも声を掛ける人は誰もいない。


 なのに――――


「おはよう、日向くん」


「おはよう、ひなた」


 ああああああ! なんて鈴木は超特級美少女氷姫ひなた様と普通に話せているんだ! しかも、氷姫様がどこか嬉しそうにしてるし!


「あ、日向くん。ちょっと待って」


 そう言いながらひなた様が鈴木に急接近する。


 慌てる鈴木が顔を赤らめる。


 くっ……ひなた様にあんなに近付けたら、絶対幸せだよな……。


「ちょっと動かないで~糸くずが……」


「う、うん……」


 息が届く距離でイチャつく二人に、俺は早めに登校したことを後悔した。


 鈴木……美少女二人から言い寄られるとか……ウラヤマケシカラン。




 その日の昼。


 カバンを開いたら……あ。母さんから弁当をもらう前に家を出てしまった。


 昨日も今日もついてないなと思いながら、仕方なく俺は売店に向かった。


 そんなとき、俺は見てしまった。廊下の向こうから来る鈴木を。


 しかも、その隣にはまた違う美少女と一緒にイチャつきながら歩いている。


 ん? 男子制服……? いやいや、あんなに可愛いのに男ってことはないだろ。しかも二人のサイズ感もちょうどいいじゃないか。


 ひなた様やもう一人の超絶美少女と比べたら、そりゃ……ちょっと弱いけど、それでも十分すぎるくらい美少女だ。


「ふふっ。日向くんってば、また神楽さんに困らされてたんだね~」


「詩乃ってさ……こう、体を密着させてくるからさ……困ったよ」


「本当に~? 嬉しいんじゃないの~?」


「い、いや、う、嬉しい……は嬉しいんだけどさ……誰が見てるかわからないし、俺なんかと変な噂になったら詩乃に申し訳ないというか」


「ふふっ。そういうことにしておくよ~そっか~神楽さんは日向くんと腕を組んでいたんだ~」


「しーっ! 声が大きいよ!」


 ああああああああ! こ、こいつら……! 堂々と廊下でイチャついてる! しかも第三の美少女が嫉妬してるのにも気づかない鈍感さ!


 鈴木……お前本当に男なのか! 普通にわかるだろ! 今の表情見てればよ! そりゃ、二人と比べたら……ちょっとばっかし弱いが、ボーイッシュで健康体のいい美少女じゃねぇか! なんで気づかないんだよ!


 神楽さん……というのは昨日の超絶美少女だな?


 ひなた様に神楽様が隣にいれば……そりゃ普通の人じゃ美少女とは思えないか……はあ……。




 それから時間が過ぎ、部活が終わっても俺はモヤモヤした気持ちのままで家を歩いていた。


 そのとき……俺は見てはいけないものを見てしまった。


 真ん中に鈴木。両隣にひなた様と神楽様。そして、三人の一歩後ろを寂しそうに歩くボーイッシュ美少女。


 お、お前ぇぇぇぇぇ鈴木いいいいいいいいい! なんて罪深い男なんだお前はああああああ!


 さ、三番目だって……三番目だって十分可愛いんだから、少しは向いてやれよおおおおおお!


 そのとき、鈴木は二人の美少女の間から、後ろの彼女の隣にすっと移動した。


「今日のヘルプありがとうな」


「うん?」


「ほら、俺に向かってきた魔物を先に把握して撃ってくれただろ?」


「へ!? き、気づいていたの?」


「ああ。さすがだったよ」


「あはは……気づかないようにしたんだけど、やっぱり日向くんには敵わないね~」


「みんなをしっかり支えたいからな! これからもよろしくな」


「うん……こちらこそよろしくね。日向くん」


 ニコッと笑う彼女の笑顔が眩しい。


 鈴木……お前ってやつは……ちゃんと見ていたんだな……三番目だとしても……ちゃんと…………。


 でもどこか寂しそうに笑う彼女の笑顔が、俺の記憶に残り続けた。






 それから数日後。


 あの子が男子だということを知った。


 …………男子なのにあんなに可愛いって反則では? てか、実は男装女子だったりしないのか!? 仕草とかもめっちゃ女子っぽいしよ~!


 またしばらく悶々とする日々が続いた。





――【あとがき&宣伝】――

 いつも『レベル0の無能探索者と蔑まれても世界最強です~探索ランキング1位は謎の人~』を読んでいただきありがとうございます!


 ということで、本日第2巻が無事発売されました~!


 昨今、ラノベ(特にWEB上がり)の続刊率がますます厳しくなる中、こうして二巻が出せるのは、本屋に足を運んでいただき、書籍を手に取っていただいた皆様のおかげです!電子で購入してくださった皆様も本当にありがとうございます!


 あらためてたくさんの方が一巻を購入してくださり、ありがとうございます!


 二巻の帯にも書いてあると思いますが……なんと! 三日後の来週の10日に電撃レグルス様からコミカライズも始まります!

 漫画担当は、てん先生という方で、商業作品は初めてということでしたが、それにしては信じられないくらい画力が高く、キャラクターの描きわけが上手で、何よりも個人的に好きなポイントは、キャラクターの表情豊かさ!てん先生の表現力によって、レベル0はより面白い作品として皆様に届くと思います!


 カドコミやニコニコ漫画で連載が始まっておりますので、ぜひ両方お気に入り登録をしていただければ嬉しいです!


 もちろん、まだ書籍は買ってないや~という方も、ぜひ一巻と二巻を手に取っていただけると嬉しいです!

 現在7話②まで投稿されておりますが、二巻ではその先のストーリーはもちろんのこと、書籍版でしか読めない特別SS凛ちゃんの一日が読めます! さらに編集者様や校閲者様のおかげでより読みやすくなっておりますので、ぜひ応援をよろしくお願いいたします!


 これからも続くレベル0をどうぞ末永くよろしくお願いいたします!

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