2話-④
「きゃああああああああ!」
気が付くと、目の前に受付のお姉さんがいて、俺を見て急に叫びながら後ろに倒れ込んだ。
「あれ!? だ、大丈夫ですか?」
「び、びっくりした! あなたね! 受付に入る時くらい物音を立ててちょうだい! ん? あなたって昨日の生徒さんじゃない?」
彼女が話した言葉に違和感を覚える。
「昨日……ですか?」
「そうよ。昨日来たでしょう?」
まさか……あれから一日も経っていたのか?
「えっと、今日って何日ですか?」
彼女はカウンターに置かれていた小さなカレンダーを俺に見せてくれた。
そこに書かれている数字は、俺がダンジョンに入ってから一日経過していることを示していた。
「丸々一日…………」
気絶していた時間が思っていた以上に長かったようだ。
それを考えたら、よく命を落とさなかったなと一安心した。
「昨日はそのまま帰ったんじゃないの? ライセンスはいらないの?」
「えっ?」
受付のお姉さんの質問に間抜けな返事をしてしまった。
「まだライセンスもないんでしょう? ダンジョンに入るも入らないもライセンスがあれば、色々便利だからライセンスだけでも付与をお勧めするわよ?」
というのも、ライセンスを嫌う人もいて、中にはライセンスを付与しない人もいる。
だからなのか、俺がそういう人だと勘違いしたみたいだ。
「そ、そうですね。せっかくだからお願いします」
「はい。ではこちらの箱の中に右手を入れてちょうだい」
さっきのやり取りですっかり雰囲気が壊れて、丁寧語ではなくなったようだ。
俺は彼女に言われるがまま、自分の右手を箱の中に入れた。
箱の中から黒い闇が外に漏れだす。
「えっ? 黒い……闇?」
恐らく潜在能力の光だと思われる。
「俺は生まれながらレベル0なんです」
「えっ!? レベル……0?」
「ええ」
初めて見る現象なのか、彼女があたふたするが次第に落ち着きを取り戻した。
「取り乱してしまってごめんなさい」
「いえ。大丈夫です」
受付のお姉さんは申し訳なさそうに言った。
でも一応Eランクダンジョンなら戦えることがわかった。
強力な魔物を倒せなくても、小さな魔石を集めて売れば、お小遣いくらいにはなるはずだ。
それなら母の家計の助けにもなるし、妹が欲しがる物を買ってやれるし何の問題もない。
ゆっくり手を引くと、右手の甲に『ライセンスの印』が刻まれていた。
「おめでとう。これで君も正式な探索者よ。探索者はダンジョンに潜る代わりに、常に危険が隣り合わせなのを理解して潜ってほしいの。ダンジョンで命を落とす探索者もたくさんいるわ。入る時は、仲間と一緒に入るか、自分のレベルと難易度とよく相談して決めてね」
「ありがとうございます」
探索者になるための手続きにかかる費用は全て無料となっている。これは国が探索者を増やすためにやっていることだ。
でも彼女が言っているようにダンジョンで消息不明になる探索者も多くいるのが現状だ。
だから潜在能力のランクで差を作ったり、ダンジョンに入るにもレベルや潜在能力を求めたりする。
外に出ると、上空を飛んでいる飛行船から、『探索ランキング』が発表される。
「今回のランキングではなんと新しい新人がランキング一位になりました~! ですが、何故か名前が載っておらず、その名は『???』となっております! しかし、その探索者ポイントは圧倒的に一位! この数字は歴史上、今まで見た事がない圧倒的な数字でございます~!」
へぇ……探索ランキングといえば、ダンジョンで探索を行うと、勝手にポイントが計算され、女神様が世界にもたらした『探索ランキング石碑』に百人まで表示されるはず。
今の一位は『???』と書かれていて、隣に書いてあるポイントも二位のポイントと桁が一つ違うくらい離されている。
「一位か。いいなぁ…………俺もいつか探索ランキングに載れたらいいなぁ」
まぁ、載りたい理由なんて特にはない。ただの憧れの一つだ。
それよりも俺はお金を稼いで、生活を安定させたいのが最終目標だ。
その日。
突如現れた新生『???』により、世界は大きく変わる事になるのだが、それを知っている人は誰一人――――アンノウン本人ですら気付いていなかった。
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【新規獲得スキルリスト】
『体力回復・大』『空腹耐性』『スキルリスト』『暗視』『速度上昇・超絶』『持久力上昇』『魔物解体』『異空間収納』『トラップ発見』『トラップ無効』『武術』『緊急回避』『威圧耐性』『恐怖耐性』
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