第5話 魔界の凶バニーあらわる! バニー騎士団ぜん滅?!
前回のあらすじ
23とは金パニーの勇者いのりの年齢だった!(あらすじ とは)
* * * * * *
魔界のある方角から、津波のような土煙を挙げて迫ってくる謎の集団を見て、バニー騎士団の一同が身構える。
接近してくるにつれ、その集団の正体は四本足で這いずる巨大なトカゲである事はいのりにも分かった。
その先頭のトカゲの背に起立して乗っている人物こそ、バニー騎士団の一同を戦慄させた主であろう事も。
「……何、アレ」
いのりは困惑する。
金髪、褐色肌の女だった。問題はその衣装であった。
「……逆バニー?」
逆バニー。「機動戦士ガン(ピー) 逆襲のバニーガール」の略称では無い。
バニーガールが纏うバニースーツの布と肌の構成を反転させた、とてもよい子には見せられないえっちなバニースーツの
接近してくる、
その集団はバニー騎士団と距離を300メートルほど詰めたところで停止した。
同時に、そーちゃんの顔が顰める。
「……マズい」
「え」
いのりは思わず目を疑う。そーちゃんの身体が半透明になってぶれ始めたからだった。
「ど、どうしたの」
「奴じゃ……引き戻される……っっ」
いのりは慌ててそーちゃんに駆け寄るが、そーちゃんの身体に触れることは出来なかった。
「ナニコレ映像?」
「妾の身体は天界にあるのじゃ……お前ら油断するな……奴は……」
そこまで言ってそーちゃんの身体が消えてしまった。
「勇者様、来ましたよ」
困惑しているいのりに、敵を警戒してた赤丸が声を掛ける。
振り向くと、トカゲの上から飛び降りた逆バニーが一人でゆっくりと近づいていた。
バニー騎士団の面々は各々武器を取って身構えて臨戦態勢を取っていた。
余りのも身じろぎしないので、衣装だけでなくよほど危険な存在なんだといのりは理解して逆バニーの顔を見て、思わず、はぁ?と言ってしまった。
「……色黒だけど、なんであたしそっくりなの……あ」
いのりは先ほどバニー騎士団の一人が言ったことを思い出す。なんかどこかで見たツラだな、と。
「ねぇ、もしかしてさっきの――どうしたの」
驚いたいのりがバニー騎士団に問おうとしてそこでようやく彼らの異常に気づいた。
身じろぎしない、では無く、動けなくなっていたのだ。
「みんな――」
いのりは困惑しながら再び逆バニーを見る。
自分にそっくりな顔に気を取られていたが、逆バニーの服装は今自分が着ている金ラメのバニースーツと同じく、黒地の布に虹色ラメが入ったものだった。見る限り同じ黒でもバニー騎士団のような無骨な作りでは無く、えっちな風俗店でえっちな接待をする風俗嬢が着る衣装そのままの作りだろう。但しその腰には鉄の斧が吊り下げられていた。
逆バニーはその斧を掴む。
するとその斧は瞬時に変化し、逆バニーの身体ほどあろう巨大な漆黒の斧が現れた。まるでそれは先ほどいのりが掴んだ剣でやってのけたそれである。
それを目の当たりにしたいのりの背筋に悪寒が走る。
コレはヤバい、と。
「みんな逃げて!」
直感と同時に身体が反応する。バニー騎士団に回避を叫んだが、彼らは逆バニーを見つめたまま動けなくなっていた。
魅入られていた。いのりはそう思った。まあ無理もない、あんな大事なところが全部おっぴろげな破廉恥な衣装を前にしたらショックも大きいだろう。あたしの方がもっとショック受けてんですけどね!と言いたかったがそんな場合では無かった。
次の瞬間、逆バニーは手にしていた巨大な斧を軽々と振り回した。
衝撃波が土煙を巻き起こし、パニー騎士団を飲み込む。
肉塊が四散する。彼らが聖衣と呼んでいたソレは一切役に立たず無惨にも引き裂かれていった。
反撃する暇も与えられ、いのりの目前で自分を勇者と呼んでくれたバニー騎士団は逆バニー出現から数分で肉塊となって荒野に飛び散った。
本能で回避出来たいのりだったが、目前で降り注ぐ、あの気のよさそうな男たちだった肉塊の雨を見て声を失う。目の前に落ちた首は下半身が苛々とか言っていた騎士団のメンバーのものだった。その顔に根元から千切れた勃起したものが落ちて重なる。自分や逆バニーを見て欲情していたのだろうか。
言葉を失くしたいのりはその場に固まっていた。
「Mダ、イKテIタ」
いのりの背後に、巨大な斧を振りかざした逆バニーがいた。
その斧の平に、飛びかかった赤丸が握る長剣の突きが激突する。
「勇者様ぁ! 逃げて!」
「あんた!」
赤丸が逆バニーの攻撃を回避していた事に驚いたことでやっといのりは我に返る。
しかしよく見れば赤丸は頭から血を流してて、無事ではないようだった。逆バニーの斧は僅かに揺らいだだけで、赤丸は剣を手放し反動で弾き飛ばされてしまった。
闘わないと殺される。
いのりは間近に落ちていた赤丸の長剣を掴む。衝撃で刃こぼれしていた。理屈は理解出来ていなかったが掴むと創造神の加護で凄い武器になる。それだけは分かっていたので再びそれを黄金剣に変化させた。
赤丸の攻撃をモノともしなかった逆バニーの斧がいのりを狙って振り下ろされる。いのりは無茶を承知でそれを黄金剣で受け止めた。
受け止めきれなかった。黄金剣は粉砕し、巨大な斧がいのりめがけて振り下ろされる。
ところがその巨大な斧が直前で巨大な穴が空き、黄金剣を受けた部位から砕け散った。結果、その欠損した斧の刀身部に身体が収まることでいのりは粉砕を免れた。
「KレW……MサK」
逆バニーは弾き飛ばされた赤丸の方を見た。既に赤丸の姿はそこに無かった。
「……N?」
逆バニーは突き立てた斧の方を再び見ると、そこにいのりの姿は無かった。
周囲の肉塊の海を見渡すが、既に二人の姿は何処にも見当たらず、自らが率いる巨大トカゲに合図する。そして一匹減ってることを知り、逃走に使われたことを悟った。
つづく
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