第3話 勇者と言われましても。
まだ第3話ですがこれまでのあらすじ
金バニーガールの宇佐美いのりを現世から
「そーちゃんと気軽に呼んでもええのじゃよ?」
* * * * * *
「勇者と言われましても」
いのりはいきなり幼女から勇者と呼ばれて戸惑う。
「然り」
創世神と呼ばれた幼女(通称そーちゃん)は頷き、
「あのオネェから聞いとるじゃろ?」
「いや、全然」
いのりは怪訝そうな顔で手を振った。
「はい? そんなハズじゃ……」
そーちゃんはぺったんな胸元に挟んでいた神様専用スマートフォン通称神ほんを起動させ、ブックマークからカクヨムのトップページを開いてそこから第1話を読み返す。
「……あれ。マジで書いてない」
「転生するとは聞いてたけど、何、勇者ぁ? マジで?」
「あのマッチョオネェ、脳筋過ぎで相変わらず肝心なことは言い忘れるのう」
困惑するそーちゃんはため息をつくが、やれやれとぼやくと頭を掻いた。
「改めて説明せなあかんね。
この世界、魔界から侵攻を受けておる。
この世界の人間たち頑張って抵抗してるんじゃが、ちーと力及ばずでな、そこであのマッチョに相談して強そうな奴を
そう言うとそーちゃんはいのりをマジマジと見る。
「な、何?」
「おんし、本当に強い?」
もっともだ、とばかりにバニーボーイズもうんうんと頷く。
「強いかどうかってより、何この変態たち、まずそこあたしに説明するのが急務じゃない?」
「変態とは何だ変態とは」
「女の分際で選ばれた戦士にのみ赦される闘いの聖衣を着ている破廉恥な輩に言われる筋合いは無い」
「くそう見てるだけでも下半身が苛々するのに態度も苛々する」
「だからさぁ」
いのりはバニーボーイズに睨まれて困り果てる。そしてバニー姿のそーちゃんの身体を見回し、
「あんたが創世神って事でこの服装の意味だいたい理解したんだけど……この変態たち何者?」
「妾の力を付与した、魔界の軍勢と最前線で闘う戦士たち、その名もバニー
そーちゃんが紹介するとバニー騎士団の一同は整列しポージングを始める。
店に体育会系マッチョが訪れた事は珍しくなかったが、バニースーツ姿のマッチョというここまで暑苦しく絵的にアレなモノをみせられたいのりは立ちくらみを覚えたが何とかこらえた。
「おんしにはこのバニー騎士団に入って一緒に闘って欲しいのじゃ」
「ええ……」
「我々はここに創世神様が召喚した勇者が来られると言う事でやってきたのだ!」
バニー騎士団のリーダーはポージングしながら説明する。
「確かにあの飛竜を葬った実力は認めよう!
しかし! 我らが来ているこの聖衣を模した貧弱なモノを着ている女に勇者の資格があるとはとても思えん!」
「いや資格とか知らんしあたし……」
いのりは困り果てる。
「転生言うから元の世界のしがらみが無く一から出直せる程度しか考えてなかったんだけどぉ」
「異な事を」
そーちゃんはいのりをじろじろ見て、
「おんしも聖衣着とるじゃろ」
「これは仕事着というか……あたし的にはもう脱ぎたいんですけどコレ」
「妾はあのオネェに強いバニーを要請したのじゃ、勇者で無いハズが無い。現に飛竜を斃しておる、実力は確かじゃ」
「いやあれたまたまじゃ」
「しかしですね」
ピンク頭のバニー騎士が会話に入ってきた。
「我々が闘っていた飛竜、今まで相手にしてきた奴とは少し違ってました。明らかに強かったです」
「赤丸、何を言い出す」
「正直に言ってるだけです。ボクはその人、破廉恥ですが勇者と呼ぶに相応しい実力があると思います」
リーダーから赤丸と呼ばれたピンク頭のバニー騎士は当初からいのりに敵意を見せていない人物だった。いのりには細マッチョの若輩な印象があったが会話が通じそうな相手だと思っていたので少し安心した。
「つーか」
いのりはそーちゃんを睨み
「強いバニーってどういう事」
「そのままじゃが」
「強いとか兎も角あたし呼んだのってバニーだからって事?」
「そのままじゃが」
当たり前のように答えるそーちゃんに、思わず頭抱えてしゃがみ込むいのり。
「何この交通事故……って確かにトラックにはねられて転生したんだけど……」
「そういうわけで」
突然赤丸はいのりに向かって長剣を放り投げる。
へ?ときょとんとするいのりだったが長剣を両手でキャッチした。
「改めて我々に実力を見せて貰いましょう」
「はい?」
呆気にとられているいのりの背後で、絶命したはずの飛竜が吹き上がるように立ち上がった。
次の瞬間、黄金の閃光が走り、飛竜が四散する。長剣を持ったいのりが背後の敵意に反応し、振り向きざまに五連の突きを放ってその四肢を断ったのである。その間僅か数秒。瞬く間の出来事であった。
「……死霊化した飛竜に圧勝するとは、いやいやこれほどとは」
赤丸はいのりの戦闘ぶりを拍手しながら感嘆する。そーちゃんやリーダーや他のバニー騎士たちは呆気にとられていたがやがて赤丸に反応して拍手し始めた。
長剣を突き放った姿勢のいのりは自分の行動に気づいて思わず頭を抱える。
「あちゃあ……うっかりやっちまった?」
赤丸は、困り果てて長剣を放り捨てたいのりを見てニコリと笑い、
「貴方、トンデモない実力者ですね」
「うー」
いのりは泣いているのか笑っているのか、複雑そうな顔で気まずそうに、はい……と頷いた。
つづく
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