第12話 猫カフェ
「デートしたい!!」
土曜日。何もすることがなく、ダラダラしようかと寝転んでいた樹海人がその日のやることは芽穂の言葉で決められた。
デートと言っても、この前のようにスクープされたら嫌なのであまり人がいる場所にはいけない。ぶらぶら散歩デートもいいが、もしそうなったら今後そればかりになりそうなので今日は近くにできた猫カフェに来ている。
「ニャ~」
「ニャ~」
ふかふかするような毛並みの猫ちゃんや、もこもこするような猫ちゃん。はたまた毛が短くて遊び道具によく反応する血気旺盛な猫ちゃん。
動画でその姿を見ているだけで癒やされるというのに、本物の猫ちゃんを目の前にしたら癒され死してしまいそうだ。
そう……俺は猫カフェができたからデートにいこうと誘ったが、内心ただ猫ちゃんに囲まれて癒やし死されたいだけだ。
けど――、
「なんで俺の周りだけ猫ちゃん来ないの……」
まるで俺のことを避けるように、猫ちゃんが寄ってこない。
定員さんに助けを求めおやつをあげようとしたり、遊び道具を持ったりといろんな方法で猫ちゃんが好むこと試したがなぜか俺はすごく嫌われていた。
「ほいほいほい」
そんな俺とは真逆で、芽穂の周りにはありえないほど猫ちゃんが寄ってたかっている。膝から下が猫ちゃんに埋め尽くされるほど、店内の猫ちゃんが大集結していた。
「芽穂ばっかりずるい」
「ず、ずるいって言われても何もしてないよ?」
芽穂は周りに集まった猫ちゃんたちに困惑している。
「いいなぁ〜いいなぁ〜。俺だって猫ちゃんのこと抱っこしたいなぁ〜」
「……私に言われてもどうしようもないよ。樹海人ってば知らないところで猫ちゃんに嫌われてるけど、なんかやったの?」
「それがわからないから悲しいんだよ……」
あぁ
なぜ俺のことを嫌っているんだ!
「ん?」
諦めかけていたとき、一匹の猫ちゃんが小屋の中から俺のことを見ていることに気づいた。唯一、店内にいる猫ちゃんの中で小屋の中にいる猫ちゃんだ。
まさかこれはチャンスなのでは?
「頑張れ〜」
俺は定員さんの全力サポートのもと、猫ちゃん捕獲作戦を始めた。
その結果は――
「おぉ……おぉ! すごい! 猫ちゃんってこんなぬいぐるみみたいな毛並みなんだ!」
猫ちゃんのことを抱っこすることに成功した。
他の猫ちゃんからは嫌われているのに、なぜかこの猫ちゃんには嫌われていなかったのですんなり抱っこすることができた。
「ふふっ。念願叶ってよかったね」
「うん」
さっきまで少し離れた場所で見守ってくれていた芽穂が、すぐ隣まで来て俺が抱っこしている猫ちゃんのことを撫で始めた。
嬉しそうに喉を鳴らし始める。
「芽穂って猫ちゃんの扱いうまいよね」
「ふふふ。まぁ実家に猫ちゃんがいるから、そのおかげなのかもしれないけど」
「え。それは初耳」
「あれ? あぁ〜樹海人から離れたあと飼い始めたから知らないのかも」
「ふ〜ん」
俺が知ってる芽穂の家庭は、厳しいような気がしてたので猫ちゃんを飼ってるなんて驚きだ。
芽穂の家庭のことを考えて忘れていたが、俺も芽穂のように芽穂のご両親にいつか会いに行かないといけないんだよな……。
俺の小さい頃の記憶じゃ、あの人が俺のことを認めてくれるようには思えない。
「大変だなぁ〜」
「猫カフェで、猫ちゃん一匹を抱っこするのに1時間近くかかるとはさすがの私も思わなかったよ」
思わず漏れた言葉に、芽穂は勘違いして捉えてくれた。
いつか芽穂のご家族に挨拶しに行かないといけないっていうのはちゃんと頭の中にしまっておいて、今はデートに集中しよう。
デートを始めたのが遅かったせいで、もう時刻は17時を過ぎようとしている。
「芽穂。俺実はちょっと行きたいところがあるんだよね」
「どこどこ?」
「ちょっと電車に乗っていかないと行けない場所なんだけど、人気がなくていいところ」
「ほへぇ〜。樹海人はそこで私とイチャイチャしたいと?」
「うん。そうだよ」
「へっ? あっ、だ、だよね!」
かくして俺たちは、イチャつくためにとあるいい景色が見える場所に向かった。
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