第8話 新学期&転入生
夏休み終盤ということもあったが芽穂とダラダラ過ごしていたら、あっという間に夏休みは終わってしまった。
今日から学校。
いつもより少し早く起きて、制服に着替える。
たしか今日は午前で終わりのはずだったので、弁当は作らない。
「じゃあ、俺そろそろ行こうかな」
「うん。頑張ってね」
そういえば芽穂は俺の家に来て高校はどうなったのだろうか?
この疑問を持つの、少し遅かった気がする。
「芽穂って高校どうしてるの?」
「ん〜? 普通に行ってるけど? あ。ふふっ。今日、樹海人のこと驚かせるから覚悟してね?」
「はいはい。ま、行ってくるわ」
「いってらっしゃ〜い!」
◆◇◆◇
家を出るとき、驚かせると言われたので帰ったらなにかすると勝手に思っていた。
まさか――
「こんにちは! 山崎芽穂って言います。めめって名前でインターネットでいろんなことしてます。知ってる人いるかな? これからよろしくお願いします!」
俺が通ってる学校に転入してくるなんて、誰が想像できたんだよ……。
「え? えっ!? めめってまさかあのめめちゃん!?」
「すげぇ〜……」
「静かにっ! めめちゃんがびっくりしてるでしょうが!!」
クラスが有名な芽穂の登場にどよめいていたが、女教師である
「皆さん。私は高校にあまり通ったことがなくてわからないことだらけなので、気軽に話しかけて教えてもらえると嬉しいです!」
まるで太陽のような眩しいと思うような笑顔だ。
さっきからクラス全体を見渡しているように見えるが、高頻度で俺と目があってる。
「もちろんだよめめちゃん!」
「静かにっ!!」
「ひっ……」
少し先生のめめちゃん愛が暴走している気がするが。
「じゃあめめちゃんは……樹海人の隣の席に」
「えぇ〜ずるいぞ樹海人!」
「樹海人の横しか空席がないのだから仕方ないだろう。一番後ろで見づらいかもしれないけど、大丈夫かな?」
「はいっ! 問題ありません!」
芽穂はたまたま俺の隣の席になれて嬉しいのか、スキップ混じりに隣まで来て席に座った。
クラス全体から、なぜか隣の席に指定した先生からも嫉妬の視線が俺に向けられている。
「ふふふっ」
ただ黙り込むことしかできない俺のことなんておいて、芽穂は嬉しい余韻に浸かっているのか体を左右に揺らしている。
この状況、どうすればいいんだ?
……と悩んでいたがその後すぐチャイムが鳴り、なんとか窮地を切り抜けることができた。
1限、2限、3限、4限とあっという間に時間は過ぎ――。
ちなみに授業の合間、芽穂の元にはクラス外からも沢山の人が来ていた。あとそのせいなのか、俺のもとにはむさ苦しい男どもが来ていた。
質問攻めにされていて少しかわいそうだったが、もし俺があそこで割って入ったら絶対面倒なことになっていたはず。
事前になにも話していないのでわからないが、インフルエンサーという芽穂の立場からすると恋人という関係は明かさないのがベストなんだろう。
「お休みって……」
「以前投稿していた動画を参考にして……」
「めめちゃんって……」
もう今日の授業は終わりあとは帰るだけなのだが、芽穂の周りには相変わらずたくさんの人がいる。
とりあえずお昼ごはんでも作って待ってようかな。
樹海人はもうこの状況は致し方ないと思い、先に帰ろうとしたのだが――
「この前話題になったあのネット記事は本当なんですか?」
一人の何気ない質問に、さっきまで騒がしかった教室が静まり返った。
樹海人の足は必然的に止まった。
誰もが黙り込む。
芽穂の回答に息を呑んだ。
「ふふふ。さすがにそれ以上はプライベートだから教えられないよぉ〜」
芽穂は笑いながら、真偽を教えてもらえず落ち込んでいる人たちの間をすり抜け、一人さっそうと教室から去っていった。
「なぁやっぱりめめちゃんってかわいいな」
「そうね。めめちゃんに彼氏がいるのかもしれないのは残念だけれども、私は二人の恋を応援するわ!」
寄ってたかって質問していた人たちは、校門から出ていった芽穂のことを尾行せず窓から敬礼して見送っていた。
ファンの民度がいい証拠だ。
「めめちゃぁ~ん!」
というか、なんで生徒に混じって先生もいるんだ?
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