第6話 スクープ
『超人気インフルエンサー、噂の彼氏とラブラブ膝枕!!』
俺は一つのネット記事を見て、心臓が止りそうになった。
「は?」
ネット記事に書かれていることはほぼ憶測や捏造だったが、そこにはたしかに芽穂のことを膝枕している俺の画像と、芽穂のことを背負っている俺の画像が載せられていた。
周りの風景や、俺の顔にモザイクが乗っているので画像から住んでいる場所を特定するようなことをするのは不可能っぽい。
「げえむはげえむ。げえむはげえむ」
幸いにも芽穂はソシャゲに夢中になり、まだこのネット記事は読んでいない。
ここに書かれている俺のことを批判するような文を読んだら暴走しそうなので、本当に良かった。
教えないだけなので、聞かれない限り俺は別に嘘をついているわけじゃない。
ルールの隙ってやつだ。
でも、なんでスクープされたんだろう。
樹海人はバレた理由を考えたが、これといった明確な理由は思いつかなかった。
「そういえば芽穂って超人気インフルエンサーだけど、過去になんか嫌がらせとかそれたことってあるの?」
「ん? まぁそりゃあ、全人類が私のことを認めてくれるわけじゃないしあったことにはあったけど、そんなやばい奴はないかな」
「ふーん」
ストーカーをされて、俺たちが住んでいる家を張られててスクープされたわけじゃないのか。
だとしたらあの記事が出来上がったのは偶然なのだろうか。
「でもあの画像に映ってた樹海人、結構いい感じに映ってたから私は別に良かったと思うよ?」
…………芽穂は一体何のことを言っているんだ?
「あ。でも変なことばっかり書かれてたから、あれがなければよかったかなぁ〜」
まさか芽穂はあのネット記事をもう読んでいた?
「芽穂。芽穂ってもう俺たちのことが盗撮されてたネット記事見たの?」
「? 見たけど?」
当たり前のように返答され、言葉に困った。
「もしかして樹海人ってば、私があのネット記事を見て騒いでないから変に思ってるんでしょ?」
「うん。だって芽穂はあういうの見たら絶対騒ぐじゃん」
「ふふふ。私はね……嬉しいの!」
「え」
芽穂は手に持っていたスマホをベットに置き、両手を広げキラキラした瞳を向けてきた。
「だってあの記事のおかげで樹海人のかっこいいところが認められるんでしょ? んふふ。なんか嬉しいんだよねぇ〜」
批判されていることに怒ると思ったが……やはり芽穂はポジティブだ。昔から何も変わってない。
「芽穂が嬉しいのなら俺はいいんだけどさ」
「まさか樹海人、私があんまり怒ってくれなかったら拗ねてるの?」
「そんなわけないじゃん」
「えへへ。やっぱり拗ねてるじゃん」
芽穂はどこか嬉しそうにベットから降りて、寝転んでいる俺の体の上に馬乗りになった。
「何してるの?」
「ん? ただ樹海人のことを慰めようとしてるだけで別に何もしてないよ?」
「だから拗ねてないって」
どうやらもう何を言っても無駄らしい。
芽穂に子供をあやすように「わかってるわかってる……」と、頭を撫でられ喋れなくなった。
「ちょっと起き上がれる?」
「ん」
半ば強制的に手を引っ張られ、起き上がった。
まだ芽穂は太ももの上に座っていて、顔が近い。
ちょっと顔を動かしたらおでこが当たっちゃいそう。
「はい」
芽穂は両手を広げてきた。
何も言ってないけど、これはいつもしているハグっていうやつだ。
「これは恋人ルールのやつじゃなくて、ただ私が樹海人とハグしたいだけだからカウントしないでね?」
「わかったよもぅ……」
しかたなくハグをすると、脇の下から腕が絡められた。
体が密着してて、芽穂の俺と同じように鼓動がはやくなっている心臓の音が聞こえる。
右耳から微かに吐息が聞こえる。
もう何度もハグをしているはずなのに、いつまで経っても慣れる気がしない。
「少しは落ち着いた?」
芽穂は自信満々な声で耳元で囁いてきたが――
「ハグしたせいで余計落ち着かないんだけど……」
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