第38話 衝撃の事実

 光の中から姿を現した魔王は、まるで別人のようだった。

 今までの威圧的な迫力も無ければ、威厳のある風格も無ない。

 ご当地キャラクターの様な愛嬌と何処か憎めない可愛らしさがある。


 魔王は私たちに向けてオドケタ感じで、舌をペロリと出しながらピースを繰り返していた。


「ちょっと!まだ話もしてないのに何してるのよ!」


 姉さんは私が独断で行動したことにお怒りのようだった。

 しかし私は何も悪い事はしていない。壊滅的な魔王のコミュニケーション能力を改善してあげたつもりだった。

 あんな威圧的な態度では人と折り合いをつけて仲良くすることなどできない。


 私は寧ろ姉さんに誉めて貰いたいと思っていた。


「まともに話ができる様にしたんだから誉めてよ!」


「まともに話し合いって…こんなチャラけたキャラじゃ…」


 そう言って姉さんはチャラけた魔王を訝し気に見つめる。

 魔王は姉さんに向かってスキップを踏みながら投げキッスを飛ばしていた。

 余りにもふざけた様子に姉さんはワナワナと震えだす。


 を伸ばして魔王を縛り動けなくする。


「キャー!ちょっと何するのぉ~外しなさいよ!」


「オカマにしたの⁈」


 姉さんは魔王の様子に目を丸くしながら私に目を向けた。

 自分だってこんなキャラにしたつもりじゃ無い。

 私は皆の愛されキャラをイメージしただけだ。


「違います!私は皆から好かれる魔王をイメージしたんです!」


 私の言葉に姉さんは深く溜め息をついた。

 そして途方に暮れた様子でお姉になった魔王を見つめている。

 悩む様に何かを考え込んでいた。


「こんなんじゃ話にならないわね…」


「何よ、その言い方!私だって話ぐらいできるわよ!」


 姉さんの言葉に魔王は激しく怒りを見せる。お姉口調が激しさを増していた。

 姉さんはそんな魔王の様子に「はぁ~」とため息をついた。


「私たちはエルフの里から手を引いて貰いに来たの!もう手を出さないと約束して!」


 姉さんの口調はまるで子供に言い聞かせる様な感じだった。

 それを聞いた魔王は一瞬、キョトンとすると訝し気な様子を見せる。


「あのねぇ…何か勘違いしてるみたいだけど…私はエルフの里の件には関わっていないのよ…」


 それを聞いて一同が驚愕する。後ろで影を薄くしていたミクも身を乗り出してくる。


「影で糸を引いてたのはヒドラーなの…ヒドラーが勝手に起こしたことでエルフの里を滅茶苦茶にしたのは私も心を痛めているわ…」


 新たな真実に私たちは驚いていた。存在感が全く無かったパイアオジサンですら目を丸くしている。

 しかし魔王が私を知ってたのは何故だろうか?女神だと勘違いしてるし。


「貴女の事は古い文献で昔から噂になってたのよ…この世界を救う女神が現れると…」


 魔王は私を愛おしむ様な目で見つめた。潤んだ瞳から涙が溢れている。

 私はその姿を見てゾッとしていた。殺してやろうかと思った。


「幹部会議の時にねヒドラーが貴女の噂を議題にしてたの…それでこんな悪事を企てたのね…」


 私はもう我慢ができなかった。

 魔王の所に突進してその頭をポカポカ蹴りつけていた。


「痛っ!痛っ!…」


 大広間に魔王の頭が叩きつけられる音がポカポカと響き渡っていた。


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