第34話 エルフとの因縁
私たちは神の大地に向かっていた。
道すがらエルフの話を口に出すが、その話になると姉さんは急に口を濁した。
こんなに真剣な様子の姉さんは見たことが無い。
私はエルフの元に赴くのに不安を覚えていた。
「オジサン、エルフの里ってどんな所?」
姉さんに話しても濁されるので、仕方なくパイアオジサンに聞いていた。
「エルフの里って言うくらいだから、エルフがいっぱい居るんじゃない」
ありきたりな事しか言わない。聞くべきでは無かった。
姉さんは相変わらず険しい顔をしている。
元気付ける為にパイアオジサンを使って色んなギャグを飛ばしたが全部、無視されていた。
「姉さん…殿様!!!」
パイアオジサンの頭にヘチマを乗せて顔に白粉を塗って姉さんに晒したがクスリともしない。
パイアオジサンの頭部まで剃ったのに空しく通り過ぎていく。
剃り落された頭部の髪が風に飛ばされて舞い散っていった。
ギャグの限りを尽くしたパイアオジサンの姿には昔の面影は無かった。
空しいその姿はピエロの様に滑稽だった。
「姉さん、元気を出そうよー」
「あら…私は元気よ。ただ悩んでるのよね~」
「何を?」
「エルフの奴らをどうやって叩き潰そうかと思って」
そう話す姉さんの顔には悪魔が宿っていた。
余りにも殺気立った不気味な顔付に私は身震いする。
やはりエルフとは何かあったに違いない。
不安を覚えていたが姉さんに聞くこともできず、私は珍しく悩んでいた。
そんな時、私と同じ年頃の女の子に遭遇する。
目をパチクリさせた女の子は耳が長くて明らかにエルフだった。
金色の長い髪を束ね、少しふくよかな頬をほんのり赤らめている。
緑色のワンピースを纏う姿は妖精の様に幻想的だった。
その姿を見た姉さんは不意に眉間に皺を寄せる。
ヤバさを感じた私は姉さんとの間に割って入った。
女の子はそんな私を不思議そうに眺めている。
「何でここに人間がいるの?」
「この地のどこかにドラゴンの住処を作ろうと思ってるんだけど…エルフの人たちに認めて貰いたくて」
「ドラゴン⁈」
その言葉を聞いた途端、女の子の顔がみるみる険しくなった。
氷の魔法で私を攻撃する。私は咄嗟にとろろを放って相殺を試みた。
しかし私のとろろの方が何倍も威力があったようだ。
女の子はとろろに塗れてしまった。
「うわぁ!なにこれ…べちょべちょする…」
「良くやったわ!」
藻掻いている女の子の前に姉さんが鼻高々に登場する。
うっかりやってしまったが女の子を拘束する気はない。
姉さんを無視してとろろを回収する。
「何なのこの魔法?…凄いね…こんなの見たことない」
女の子の凄いという言葉に私はすぐさま反応した。
鼻高々にニンマリと笑う。
「山芋の魔法なの~」
「えっ?山芋ってあの山芋?何だか凄~い!」
「エヘヘへ…凄いでしょ」
女の子と私は何故だか意気投合していた。
それを見て姉さんは不貞腐れている。
「いい加減にしなさい!そいつら私たちには天敵なのよ!」
私たち2人は不機嫌な姉さんの顔をポカーンと眺めていた。
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