第31話 決定権
城主の間は先程とは打って変わって落ち着きを取り戻していた。
玉座には姉さんが陣取り、ブタと男はその前で正座させられていた。
すらりと伸びた長い脚を組んで、肘掛けに肘を乗せて頬杖をついている。
すました顔の冷たい様子は、どこか気品が漂っていた。
「あんたらの企みは何?」
「国の乗っ取りです…」
姉さんの問いかけにブタが簡単に口を開いた。
ブタは私たちの力に慄いているのか、どこかキョドっている。
男の方はブタの素直さに苦虫を噛みつぶした様に唇を噛んでいた。
「それが何で私たちを捕えようとしてたの?」
「ドラゴンを討伐する力があればこちらの有利になるだろ!」
姉さんの言葉に男は堪らず口を開いた。
その顔は悔しさに満ち溢れている。
「この娘にそんな力があるなんて思って無かった…!」
「それだけの力がある娘をあなた達がどうこうできると思って?」
男は不意に姉さんから顔を背けた。
自分の考えが浅はかである事に気が付いたのだろうか。
「反乱軍に城を落とされた私たちは一刻も早く国を落とす必要があったのだ…」
要は焦っていたと言いたいのだろう。
しかし反乱が起きたとしたら国が対処をするのではないだろうか?
「しかも国は私たちの不穏な動きに感づいてきていた。エルフィン城が陥落しても援軍が来なかったのがその証拠だ」
「それにしても浅はかね…この娘が本気を出せば国だって相手にならないわ」
私の眼は飛び出し、ビックリマークまで同時に飛び出した。
その話は大げさすぎではないだろうか。
「何故、そんな力に気づけなかったんだ…召喚までしてずっと計画してたのに…」
悔しさを滲ませる男の瞳には涙が溢れていた。
姉さんは非常にも憐れむどころか見下している。
「考えが甘いのよ!自分たちに都合よく事が運ぶと思ったら大間違いよ!しかもこの娘をあんな風に扱って!!!」
姉さんの迫力には鬼気迫るものがあった。
ブタと男はその様子にたじろいでいる。
「こいつらどうします⁈やっちゃいます⁈」
姉さんは何故か私に決定権を委ねた。
椅子にふんぞり返っているアンタの口からそんな言葉が出るとは思ってもいなかった。
「えっ…あの…その…」
突然の展開にキョドる私はパイアオジサンに助けを求める。
パイアオジサンは素知らぬ顔で明後日の方角を眺めていた。
「遠慮しなくていいのよ。あんたをあんな目に合わせていた奴らなんだから」
姉さんの話はもっともだったが、私は非常にはなれなかった。
親と一緒に現世に行けなかったのは私の力のせいだし、牢獄の生活はあれが普通だと思っていた。
何よりあそこに居なければ姉さんの事は記憶になかっただろう。
「姉さん…とろろには浄化作用もあると言ってたわね」
「ええ…そうよ」
私はブタと男の口をめがけてとろろを注ぎ込んだ。
『ベチャベチャベチャベチャ……』
「うぐっうぐっ…」
注ぎ続けられ悶え苦しむの2人の体がうっすらと光り始める。
その輝きは激しさを増し辺り一面を光が包んだ。
光の中から現れた2人の様子は憑き物が取れたようにすっきりしていた。
その穏やかな顔には以前の様な欲に塗れた様子はどこにもなかった。
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