第25話 強大な魔力
帰路に向かう私の足取りは少しだけ重かった。
あんだけ大騒ぎしておきながら、秘めた力が「魔力が凄い」だけなのは肩透かしだった。
それがわかってればエルフィンの城主達だって狙ってこなかったのではないだろうか?
「姉さん、私の魔力って何が凄いの?」
「魔力の量は凄いと思うけどね…あんだけの量のとろろを出せるのは前代未聞だし…」
「それだけだったら城主達も狙ってこなかったんじゃない?」
「そうかもね…」
姉さんは何かを言いたそうだったがそれ以上は言わなかった。
姉さんが口を濁した理由は後で知る事となる。
祠に戻ったお姉さんは物凄い剣幕で神様に詰め寄った。
「ちょっと、どういうつもり⁈」
胸ぐらをつかんで引き寄せるその姿は暴力的で老人虐待を思わせていた。
タジタジの神様は慌てて姉さんを宥めにかかる。
「ちょっと待て…わしはこの娘を両親の元へ送り届ける手はないかと画策していただけじゃ」
その言葉にチャッピー姉さんの手がスルッと緩んだ。
クルリと後ろを向いて神様との視線を外す。
「やっぱり…知っていたのね」
「そりゃそうじゃ。お前がこの家族たちを現世に転移させる時に協力をしたのは空の神。わしの親友じゃ」
姉さんは私の元に来て席を外すように言った。
私はそれを頑なに拒否した。真実が知りたかったのだ。
いつもは素直な私の断固たる決意に姉さんの険しい顔つきが緩む。
「わかったわ…あんたが決めた事だもの自分の道は自分で決めなさい…」
突き放すように聞こえるが、その言葉には心を包む温かさがあった。
私を見つめる視線には尊い思いが込められている。
「空の神は両親と同じ所に転移させるのは不可能と言ったわ。この娘の魔力には時空を歪ませる力があると!だから一緒に送ってあげられなかったのよ」
私は愕然とした。一緒に行けなったのは私の力のせいだった。
もし行っていたら両親もろともとんでもない空間に飛ばされていたかも知れない。
姉さんが口を濁していたのはこのせいだったのか。
「しかしのう…この娘の魔力を抑え込む事は可能ではないか?」
「でも私の全ての力を使い果たしても、この娘の強大な力のほんの一握りしか抑え込む事しかできなかったわ」
「あわれじゃのう…そのお陰で精霊の力がずっと使えずにいたのだからのう」
私がずっと一人だったのは姉さんが精霊の力を失っていたからだった。
私の力を抑え込んで両親と一緒に送りたかったのだ。
しかし私の力は強大すぎて姉さんの力では抑えられなかった。
全ての力を失った姉さんは精霊の力が回復するのを待つしかなかった。
「哀れじゃねえよ!クソ神め!」
私は堪らず姉さんの前へ飛び出していた。
その瞳には涙が溢れてクシャクシャになっている。
「ほっほっほっ…わしと空の神はなぁずっと考えていたのじゃよ。抑え込むんじゃなくて解放させたら良いんじゃないかと」
「そんな強大な力を解放したらこの世界の時空まで歪んで大変な事になるんじゃ…そりゃあ、この娘の力は少なくなれば私の力でも抑え込めるけど…」
「そこで闇の神じゃ。この娘の解放した魔力を能力で全てを吸い込でもらう!」
「しかし闇の神に協力して貰うには一筋縄ではいきませんよ」
「どうせ神の大地の使用許可を貰いに行くのじゃろ?ついでに味方になって貰え」
「簡単に言いますけどねぇー。機嫌を損ねたら味方どころか消されちゃいますよ…」
姉さんが言った最後の言葉は、これから起こる出来事の未来を予言していた。
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