第20話 いにしえの祠

 【エリア22】をドラゴンの住処にする為には各地に点在する7人の神に許可を貰わなければならなかった。

 私たちは首都から一番近い神の元へと向かっていた。

 険しい山道を越えてきたからか、パイアオジサンは死にそうな顔で「はぁはぁ」言っている。

 私とチャッピー姉さんはピクニックの様にキャッキャと燥いでスキップしていた。


「チャッピー姉さん…今から会いに行くのはどんな神様なの?」


「山を司る神様なんだけどね…ちょっとだけ性格が悪いのよ」


 楽しそうだったお姉さんが急に顔を曇らせた。その様子だけでその神様に難があるのだけは伺える。

 私はその神様と余り関わりたくはなかった。後ろでじっと様子を眺めていようと思っていた。


「あんたが頼りよ!頑張ってね!」


 チャッピー姉さんの𠮟咤激励に私の目論見は脆くも崩れ去った。

 それにしても私が頼りとはどういう事だろう?


「私が何を頑張るの⁈」


「子供好きのお爺ちゃんなのよ。あんたには孫の様に甘えて貰いたいの」


 私は得体の知れない爺さんに、自分が甘える姿を想像して鳥肌を立てていた。

 パイアオジサンにその役を変わって貰う事はできないのだろうか?

 ジーっと見つめるとパイアオジサンはブンブンと首を横に振った。


「でも姉さん、神様って実体あるの?」


「あるわよ。私と同じような感じかな。私も触れるでしょ?」


「小汚い爺さんにベタベタ触りたくない…」


 私がいじけた態度を取るとチャッピー姉さんは優しく頭を撫でてくれ

 た。


「大丈夫よ。小綺麗な爺さんだから」


 私はチョイ悪系のダンディなお爺さんをイメージした。

 それだったら耐えられそうだ。

「お爺ちゃ~ん」と呟きながら、甘え方を何度もトレーニングしながら歩き始めた。


「見えてきたわよ」


 見上げると小高い山の頂上付近に祠は建っていた。

 あんな小さな祠に住居スペースなどある訳がない。


「あんな小さい所に住んでいるの?」


「あれは只の入り口よ」


 祠の扉を開けると地中深くまで続く階段が広がっていた。

 中は真っ暗で何も見えないが、どこまでも続く暗黒は規模の大きさを感じさせていた。

 パイアオジサンは持ってきた松明に明かりを灯す。


『バサバサバサ』と蝙蝠でも飛び出してくると思ったが、中は意外なほど奇麗だった。

 洞窟の筈なのに何処か神秘的で神々しさを感じさせる。その姿は神の社にふさわしい。


「あ、あれは!」


 先頭を歩くパイアオジサンが何かを発見したようだ。

 そこには川も無いのに一本の豪華な橋が掛けられていた。

 しかし神秘的な背景と一体化していて可笑しな感じはしない


「わぁーーーー!!!」


 先頭で橋を渡っていたバイアオジサンが突如、目の前から消えた。

 良く見ると橋には落とし穴が仕掛けられていた。

 落とし穴は深いようでオジサンの姿は全く見えない。


「大丈夫ー?」


 チャッピー姉さんが声を掛けると「こっちに来てくれー」という声がこだました。

 姉さんは私を抱えるとを橋に絡ませてゆっくりと降り始める。

 落とし穴の底で目にした光景は私たちの度肝を抜いた。


「こ、これは!!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る