第19話 エリア22
チャッピー姉さんは5人を引き連れて王宮へ向かった。
私とパイアオジサンは汚れたドラゴンの身体を奇麗にしていた。
とろろは全部吸収したが長年の蓄積で酷く汚れている。
デッキブラシの刺激が気持ちいいのか、ドラゴンは喜んでいた。
「パイアオジサン…水を汲んできてよ」
パイアオジサンはその呼び名が誰の事かわからずキョロキョロしている。
私はお前の事を言ってるんだと指を指してやった。
「パイアオジサンって?」
「バンパイアのオジサンだからパイアオジサン…」
パイアオジサン納得した様子で手をポンと叩いた。
嫌がっている様子はない。
しかし私には気になる事があった。
パイアオジサンは何故、お日様の下で平気なのだろう?
バンパイアといえば日光に当たると灰になってしまうのではないだろうか?
「ああ…そんなの平気ですよ。純粋なバンパイアならわかりませんが、先祖には人間も大勢いて私は人間寄りです。丈夫で長生きするくらいしか力は無いですし…」
そういえばパイアオジサンには特に目立った力は無い。目立った事といったら200歳以上生きてる事とダメージに強い事くらいだ。
回復するのかと思って指をちょん切ろうとしたら狂った様に暴れられた。
「パイアオジサンって…女性の下着を盗むくらいしか取り柄が無いんだね」
私の言葉にパイアオジサンは落ち込んでいる。
いじけた様にしゃがみこんで小枝で地面に文字を書いている。
私は慰めるつもりも無いのでドラゴンをフキフキしていた。
「私だって好きで下着を盗んでいたわけじゃありませんよ!!!」
パイアオジサンは泣きながら逆キレしていた。
誰かに脅されて仕方なくやっていたとでも言うのだろうか。
「女性の下着を見ると我慢しようと思っていても身体が勝手に動いてしまうんです!」
私はパイアオジサンをポカポカと蹴とばした。
今回ばかりは許すつもりは無かった。パイアオジサンの急所めがけて蹴り上げている。
私とパイアオジサンがおふざけに没頭してるとチャッピー姉さんと5人は戻ってきた。
話し合いが上手くいかなかったのかチャッピー姉さんは疲れ切った顔をしていた。
「駄目だったんですか?」
「話は付いたんだけど…場所がねぇ…」
お姉さんの話ではドラゴンの住処として与えられたのは【エリア22】と呼ばれる場所だった。
首都からかなり離れていて立地としては問題ないのだが、いわゆる曰く付きの場所だった。
山々に囲まれた深い森の奥地に【エリア22】は存在した。
【別名:神の大地】とも呼ばれ神秘的で何ものをも寄せ付けない。別名の由来は神々しいその姿にあった。
「都合のいい場所だと思うけど…何か問題でもあるの?」
「本当に神の大地なのよ。7人の神様が管理していて下手な事をしたら天罰が下るわ」
神様が本当に存在するとは思わなかった。
つまりそこに勝手に踏み込んだりすると天罰が下るという事だろうか?
「神様を説得するしかないわね」
「何処にいるか知ってるの?」
「私は精霊よ。そんなのは訳ないわ。でも…」
チャッピー姉さんは深刻そうな顔で口を濁した。
何か大きな問題でもありそうだ。
「一癖も二癖もある人たちだから簡単にはいかないかも…」
珍しく弱気な発言のチャッピー姉さんは俯きながら目を泳がせていた。
初めて見るその不安げな態度は、これから起こる出来事の前触れなのだろうか。
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