第18話 チャッピー

 ドラゴンの元へ首謀者のギルマスと実行者の鋼の牙を連れて行った。

 ドラゴンは少し興奮している様だったがお姉さんが上手く宥めた。

 お姉さんとドラゴンのやり取りに5人は驚いている。

 コミュニケーションを取っているのが信じられないようだ。


 私は暇だったのでおっさんと遊んでいた。

 おっさんの頭に花飾りをつけていた。

 数えきれないくらいの沢山の花飾りに、おっさんの頭は人間フラワーみたいになっていた。

 可愛くしようと思っていたが、これではビックリ人間だ。


 そういえば、このおっさんの名前は何と言っただろう。

 お姉さんの名前すら定かではない。

 自分の名前すらわからないのだ。知らなくても良いのではないだろうか。


 バンパイアになったオバサンが私の事を娘と被らせて真利亜と呼んでいた。

 私は自分の事を今日からマリアと名乗る事にした。

 お姉さんはオネーサーンと呼ぼう。おっさんはオジサーンだ。


 そんなどうでも良い事を考えているとシクシクと泣き声が聞こえた。

 お姉さんを中心にが伸びて5人の頭とドラゴンの頭が繋がれている。

 コミュニケーションが取れてドラゴンの言い分を聞かされている様だった。


「ごめんなさい…まさかそんな酷い事をしていただなんて…」


 最初に口を開いたのはギルマスだった。

 正義という盾を振りかざして、自分たちがどれだけ無慈悲な行いをしたか気づいたのだろうか。


「この国の平和の為だと思ってやった事なんです」


 次は男前のリーダーだった。しかしこの男の言ってる事は自分たちを庇護してるようにしか聞こえない。


「あんたねぇ!」


 堪らずオネーサーンは口を開く。


「ドラゴンたちはこの国を亡ぼすつもりなんて無かったわよね!寧ろ人間たちに気を使って離れて暮らしていたじゃない!国の平和の為って…寧ろこの子に復讐心を芽生えさせただけよね!」


 男前はオネーサーンの話にバツが悪そうに顔を歪めた。

 オネーサーンの話はもっともだ。いらない事をしでかして国を亡ぼす危機を招いたのだ。


「だってドラゴンがいたら襲われるかも知れないし、ずっと不安じゃないか!」


「はぁー…不安だからって何の敵意も持たないものを虐殺するの⁈それじゃあ、そこら辺にいる荒くれ者のモンスターと変わらないわね!」


「………」


「いいですかー!不安が嫌で何とかしたいのであれば、相手をどうこうするのでは無く自分たちを変えていくものです!」


 なんて説得力のある言葉だろう。私は思わず拍手を送った。


「相手に変わって貰おうと思っても何も変わりません!間違っている事をするモノなどいないから!みんな正しいと思うからやっているのです!」


 5人ともオネーサーンの意見には口を挟めなかった。

 迫力もあったが迂闊に口を挟むと3倍になって帰ってきそうな雰囲気があった。

 オジサーンは何故だかうっとりしながら聞いている。


「相手に変わって貰う為の押し付けより、自分たちを変えた方が遥かに早いし進歩にも繋がりますよね!」


 オネーサーンの話に男前は納得したのか力なく、うな垂れる。

 他の4人もそれに倣う様にうな垂れていった。


「あなた方がドラゴンの脅威に晒されたくないというなら、安全に思うくらい離れた場所の土地を提供しなさい!そこをドラゴンの住処とします!」


「オネーサーン…それ国王に言わなきゃどうにもならないんじゃ…」


「ん?何か発音おかしいわよ」


 オネーサーンは私の呼び方の変化に気が付いたようだ。

 私はお姉さんの名前を勝手につけて呼び方を変えたと伝えた。


「私の名前はチャッピーよ。チャッピー姉さんとお呼びなさい」


 私の目論見は見事に崩れた。

 私はお姉さんの事をオネーサーン改めチャッピー姉さん、おっさんの事をオジサーン改めパイアオジサンと呼ぶことにした。

パイアオジサン…パイアオジサン…パイアオジサン…

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